「ECサイトの売上データをもっと効率よく分析したい」「毎月のレポート作成に時間がかかりすぎる」——そんな悩みを抱えるEC事業者やマーケティング担当者は多いのではないでしょうか。結論として、Googleが無料で提供するBIツール「Looker Studio」を活用すれば、GA4と連携した全自動の売上分析ダッシュボードを構築できます。本記事では、KPI設計からダッシュボード構築手順、計算フィールドのレシピ、無料テンプレートまで完全網羅しています。この記事を読み終えたら、すぐにダッシュボード作成に取りかかれます。
ECサイトの売上分析を行うBIツールとして、Looker Studioは最適な選択肢です。Googleが提供する無料ツールでありながら、GA4とのネイティブ連携やデータの自動更新など、有料ツールに匹敵する高機能を備えています。ここでは、ECサイト運営者がLooker Studioを選ぶべき5つの理由を解説します。
無料で使えるGoogleの高機能BIツール
Looker Studioは、Googleアカウントさえあれば誰でも無料で利用できるBIツールです。従来のBIツール(Tableau、Power BIなど)は月額数万円以上のコストがかかりますが、Looker Studioなら初期費用・月額費用ともにゼロ円で始められます。
| 比較項目 | Looker Studio | Tableau | Power BI |
|---|---|---|---|
| 初期費用 | 無料 | 数十万円〜 | 無料(機能制限あり) |
| 月額費用 | 無料 | 約1万円〜/ユーザー | 約1,500円〜/ユーザー |
| GA4連携 | ネイティブ対応 | コネクタ別途必要 | コネクタ別途必要 |
| 操作難易度 | 低い | 高い | 中程度 |
小規模ECサイトから大規模ECサイトまで、予算に関係なく導入できる点が最大の強みです。
GA4との公式連携でサンプリングなし・全期間データ取得が可能
Looker StudioはGA4の公式コネクタを標準搭載しています。GA4の探索レポートではデータ保持期間が最大14ヶ月に制限され、サンプリングがかかる場合がありますが、Looker Studioではサンプリングなしで過去データを無制限に取得できます。
ECサイトの売上分析では、前年同月比較や季節変動の把握が重要です。Looker Studioなら過去のすべてのデータにアクセスできるため、精度の高い売上トレンド分析が可能になります。
一度構築すれば毎日自動更新でレポート工数ゼロ
Looker Studioで作成したダッシュボードは、データが毎日自動で更新されます。従来のExcelレポートのように、毎月データをコピー&ペーストする作業が不要になります。
EC事業者にとって、月次レポートの作成は大きな工数がかかる業務です。Looker Studioなら一度ダッシュボードを構築するだけで、常に最新の売上データが自動表示されるため、分析や施策検討に時間を集中できます。
800以上のコネクタで広告・在庫・CRMデータも統合可能
Looker Studioには800種類以上のデータコネクタが用意されています。GA4だけでなく、Google広告、Googleサーチコンソール、Googleスプレッドシート、BigQueryなどのGoogle系サービスはもちろん、Meta広告やYahoo広告のデータも統合できます。
ECサイトの売上分析では、アクセスデータだけでなく広告費用データや在庫データなど複数のデータソースを組み合わせる必要があります。Looker Studioなら、これらのデータを1つのダッシュボード上で横断的に分析可能です。
URL共有・PDF出力・メール自動配信で社内外の情報共有が簡単
Looker Studioのレポートは、GoogleスプレッドシートやGoogleドキュメントと同じ感覚で共有できます。URLを共有するだけで、GA4の権限がない人でもレポートを閲覧できます。
主な共有方法は以下のとおりです。
- URL共有:閲覧者・編集者の権限を個別に設定して共有
- PDF出力:レポートをPDF形式でダウンロードし、報告資料として活用
- メール自動配信:指定したスケジュールで関係者にPDFメールを自動送信
経営層への定期報告や、外部の広告代理店とのデータ共有にも最適です。
Looker StudioでECサイトの売上分析ダッシュボードを作成するには、GA4側でeコマース計測が正しく実装されていることが前提条件です。ここでは、GA4のeコマースイベントの仕組みと、Looker Studioとの接続手順を解説します。
GA4のeコマースイベント一覧と計測の仕組み
GA4のeコマース計測は、ユーザーの購買行動をイベント単位で記録する仕組みです。ECサイトで最低限設定すべき4つの主要イベントは以下のとおりです。
| イベント名 | 計測タイミング | 取得できるデータ |
|---|---|---|
| view_item | 商品詳細ページの閲覧時 | 商品名、商品ID、価格、カテゴリ |
| add_to_cart | カートへの商品追加時 | 商品名、数量、価格 |
| begin_checkout | チェックアウト開始時 | カート内の商品一覧、合計金額 |
| purchase | 購入完了時 | 注文ID、売上金額、商品一覧、税額、送料 |
これらのイベントは、Googleタグマネージャー(GTM)を使用してdataLayer経由で送信するのが一般的な実装方法です。Shopifyを利用している場合は、GA4の設定画面から一部のeコマースイベント(add_to_cart、begin_checkout、purchase)が自動で収集されます。
GA4 eコマース計測が正しく実装されているか確認する方法
ダッシュボード構築を始める前に、GA4のeコマース計測が正しく動作しているか確認しましょう。確認方法は主に3つあります。
1. GA4のリアルタイムレポートで確認
GA4の管理画面から「レポート」→「リアルタイム」を開き、実際にECサイトで商品を購入してみます。purchaseイベントやadd_to_cartイベントがリアルタイムに表示されれば、計測は正常に動作しています。
2. GA4の「収益化」レポートで確認
GA4の「レポート」→「収益化」→「eコマース購入数」を開きます。商品名や売上金額が表示されていれば、eコマースデータは正しく計測されています。
3. Google Tag Assistantで確認
Chrome拡張機能「Google Tag Assistant」を使えば、ページ上で発火しているGA4イベントをリアルタイムに確認できます。dataLayerの中身もチェックできるため、送信データの不備を発見するのに便利です。
Looker StudioとGA4を接続する手順
Looker StudioとGA4の接続は、以下の3ステップで完了します。
Step 1:データソースの作成
Looker Studioにログインし、ホーム画面の「作成」→「データソース」を選択します。
Step 2:Googleアナリティクスコネクタの選択
コネクタ一覧から「Googleアナリティクス」を選択し、対象のGA4アカウント・プロパティを選びます。GA4プロパティは「GA4」から始まる名前で表示されるため、誤ってUAプロパティを選ばないよう注意してください。
Step 3:接続とレポート作成
「接続」ボタンをクリックするとフィールド一覧が表示されます。右上の「レポートを作成」を選択すれば、GA4データを使ったダッシュボードの作成を開始できます。
接続が完了すれば、GA4のディメンション(日付、デバイスカテゴリ、チャネルグループなど)と指標(セッション数、ユーザー数、売上金額など)をLooker Studio上で自由に組み合わせてレポートを作成できるようになります。
ECサイトの売上を改善するには、適切なKPI(重要業績評価指標)を設定し、ダッシュボードで定期的にモニタリングすることが不可欠です。ここでは、EC売上を体系的に分解するKPIツリーの考え方と、各カテゴリの具体的な指標を紹介します。
EC売上を分解するKPIツリーの考え方
ECサイトの売上は、以下の公式で分解できます。
売上 = セッション数 × 購入率(CVR) × 平均注文単価(AOV)
この3つの要素が売上を構成するKPIツリーの根幹です。さらに各要素を深掘りすると、具体的な改善アクションが見えてきます。
売上
├── セッション数
│ ├── 自然検索(SEO)
│ ├── 有料広告(Google広告、Meta広告)
│ ├── SNS流入
│ ├── メルマガ流入
│ └── ダイレクト流入
├── 購入率(CVR)
│ ├── 商品閲覧率(view_item / セッション)
│ ├── カート追加率(add_to_cart / view_item)
│ ├── チェックアウト開始率(begin_checkout / add_to_cart)
│ └── 購入完了率(purchase / begin_checkout)
└── 平均注文単価(AOV)
├── 商品単価
└── 1注文あたりの購入点数
Looker Studioでダッシュボードを構築する際は、このKPIツリーに沿って指標を配置することで、売上の変動要因を素早く特定できるようになります。
売上系KPI:売上高・注文数・AOV・購入率(CVR)
売上系KPIは、ECサイトの業績を直接示す最重要指標です。Looker Studioのダッシュボード最上部にスコアカードとして配置し、毎日確認する習慣をつけましょう。
| 指標名 | 計算式 | GA4での対応指標 |
|---|---|---|
| 売上高 | — | purchaseRevenue |
| 注文数 | — | transactions(eコマース購入数) |
| 平均注文単価(AOV) | 売上高 ÷ 注文数 | 計算フィールドで作成 |
| 購入率(CVR) | 注文数 ÷ セッション数 × 100 | sessionConversionRate |
ECサイト全体の平均CVRは1%〜3%が一般的です。自社サイトのCVRがこの範囲を下回っている場合は、購買ファネルのどこにボトルネックがあるかを詳しく分析する必要があります。
集客系KPI:セッション数・ユーザー数・新規ユーザー数・流入チャネル
集客系KPIは、ECサイトにどれだけの訪問者を集められているかを示す指標です。売上を増やすには、まずセッション数(アクセス数)を確保する必要があります。
| 指標名 | 意味 | モニタリング頻度 |
|---|---|---|
| セッション数 | サイトへの訪問回数 | 日次 |
| ユーザー数 | ユニークな訪問者数 | 日次 |
| 新規ユーザー数 | 初めて訪問したユーザー数 | 週次 |
| 流入チャネル | 訪問者の流入経路(自然検索、広告、SNS等) | 週次 |
流入チャネル別にセッション数と売上を比較することで、どのチャネルが最もROI(投資対効果)が高いかを判断できます。
行動系KPI:PV数・エンゲージメント率・カート追加率・カート放棄率
行動系KPIは、サイト訪問後のユーザーの行動を示す指標です。訪問者がどのように商品を閲覧し、購買に至るかを把握できます。
- PV数(ページビュー数):ページの閲覧回数。商品ページの閲覧数が少ない場合、サイト内導線の改善が必要です。
- エンゲージメント率:意味のある操作を行ったセッションの割合。GA4では10秒以上の滞在やコンバージョンイベントなどが該当します。
- カート追加率:商品詳細ページを閲覧したユーザーのうち、カートに商品を追加した割合です。
- カート放棄率:カートに商品を追加したが、購入を完了しなかったユーザーの割合です。ECサイトの平均カート放棄率は約70%と言われており、改善の余地が大きい指標です。
商品系KPI:商品別売上ランキング・カテゴリ別構成比・商品別CVR
商品系KPIは、個別の商品やカテゴリのパフォーマンスを分析する指標です。どの商品が売れ筋で、どの商品に改善が必要かを把握できます。
- 商品別売上ランキング:売上金額の高い順に商品を一覧表示します。上位20%の商品が全体売上の80%を占める「パレートの法則」がECサイトでも当てはまることが多いです。
- カテゴリ別売上構成比:商品カテゴリごとの売上割合を円グラフで可視化します。
- 商品別CVR:商品詳細ページの閲覧数に対する購入数の割合です。表示回数が多いのにCVRが低い商品は、価格設定や商品ページの改善がポイントになります。
顧客系KPI:LTV(顧客生涯価値)・リピート率・F2転換率
顧客系KPIは、中長期的な売上成長を支える指標です。新規顧客の獲得コストは、既存顧客の維持コストの5倍以上かかると言われているため、リピート率やLTVの向上はEC事業の収益性を大きく左右します。
| 指標名 | 計算式 | 意味 |
|---|---|---|
| LTV(顧客生涯価値) | 平均注文単価 × 年間購入回数 × 継続年数 | 1人の顧客が生涯にわたってもたらす売上 |
| リピート率 | リピート顧客数 ÷ 全顧客数 × 100 | 2回以上購入した顧客の割合 |
| F2転換率 | 2回目購入者数 ÷ 初回購入者数 × 100 | 初回購入から2回目購入に至った割合 |
LTVやF2転換率をLooker Studio上で算出するには、BigQuery連携が必要になるケースが多いです。詳しくは後述の「さらに高度なEC売上分析を実現する方法」で解説します。
効果的な売上分析ダッシュボードを作成するには、ページ構成を事前に設計することが重要です。ここでは、ECサイト向けダッシュボードの基本的な設計原則と、6つのページ構成例を紹介します。
ダッシュボード設計の基本原則(F字型レイアウト・情報の優先順位)
ダッシュボードを設計する際は、ユーザーの視線の動きを意識したレイアウトが重要です。人の視線は「F字型」に動く傾向があるため、最も重要な情報を左上に配置します。
設計の3原則
- 重要指標(KPI)は最上部にスコアカードで配置する:売上高、注文数、CVR、AOVなどの主要KPIを一目で確認できるようにします。
- トレンドグラフは中央に配置する:日別・月別の売上推移グラフを中央に配置し、データの傾向を視覚的に把握できるようにします。
- 詳細データは下部にテーブルで配置する:商品別・チャネル別の詳細データは下部にテーブル形式で表示します。
また、ダッシュボード全体の配色は3色以内に統一し、コーポレートカラーを活用すると見やすくなります。
ページ1:全体サマリダッシュボード
全体サマリダッシュボードは、ECサイトの現状を一目で把握するための最重要ページです。経営層から現場担当者まで、全員がまず最初に確認するページとして設計します。
スコアカードで主要KPIを一目で把握
ダッシュボードの最上部に、売上高・注文数・CVR・AOVの4つのスコアカードを横並びに配置します。各スコアカードには比較期間を設定し、前月比や前年比を自動で表示させましょう。
日別・月別の売上トレンドグラフ
スコアカードの下に折れ線グラフを配置し、日別または月別の売上推移を表示します。前月や前年同月のデータを同じグラフ上に重ねて表示すると、売上のペースが一目でわかります。
前月比・前年比の対比表示
季節性のあるEC商材の場合は、前年比の確認が特に重要です。Looker Studioの比較期間機能を使えば、自動的に前月比・前年比の増減率が表示されます。
ページ2:商品分析ダッシュボード
商品分析ダッシュボードは、個別商品のパフォーマンスを深掘りするためのページです。
商品別売上ランキング(テーブル)
ディメンションに「アイテム名」、指標に「アイテムの収益」「アイテムの数量」「カートに追加」を設定した表を作成します。売上上位の商品を素早く特定できます。
カテゴリ別売上構成比(円グラフ)
ディメンションに「アイテムカテゴリ」、指標に「アイテムの収益」を設定した円グラフを配置します。どのカテゴリが売上に貢献しているかが一目でわかります。
商品別CVR・AOVの比較(バブルチャート)
X軸に商品の表示回数、Y軸にCVR、バブルサイズに売上金額を設定するバブルチャートを使えば、「表示回数は多いがCVRが低い商品」(=改善対象)を視覚的に発見できます。
ページ3:集客チャネル分析ダッシュボード
集客チャネル分析ダッシュボードでは、訪問者がどの経路でサイトに流入し、どのチャネルが売上に貢献しているかを分析します。
チャネル別セッション数・売上・CVRの比較
ディメンションに「セッションのデフォルトチャネルグループ」、指標に「セッション」「purchaseRevenue」「sessionConversionRate」を設定した棒グラフを作成します。
広告データ統合によるROAS可視化
Google広告のデータソースを追加し、広告費用と売上を同じダッシュボードに表示すれば、ROAS(広告費用対効果)をチャネル別に比較できます。
参照元/メディア別の詳細分析
「セッションの参照元/メディア」をディメンションに使い、さらに詳細な流入経路ごとのパフォーマンスをテーブルで確認します。
ページ4:購買ファネル分析ダッシュボード
購買ファネル分析ダッシュボードは、ユーザーの購買プロセスにおけるボトルネックを特定するためのページです。
商品閲覧→カート追加→チェックアウト→購入完了のステップ別分析
GA4のeコマースイベントを活用し、各ステップの通過数と離脱率を棒グラフやスコアカードで可視化します。
| ファネルステップ | 対応イベント | 分析のポイント |
|---|---|---|
| 商品閲覧 | view_item | 商品ページへの誘導は十分か |
| カート追加 | add_to_cart | 商品情報や価格に問題はないか |
| チェックアウト開始 | begin_checkout | 送料や手数料で離脱していないか |
| 購入完了 | purchase | 決済手段やフォームに問題はないか |
ファネル離脱率の把握と改善ポイントの特定
各ステップ間の離脱率を計算し、最も離脱率が高いステップに対して優先的に改善施策を実行します。たとえば、カート追加からチェックアウトへの離脱率が高い場合は、送料の表示タイミングや決済手段の追加を検討しましょう。
ページ5:ユーザー属性分析ダッシュボード
ユーザー属性分析ダッシュボードでは、どのような顧客が購入しているかをデモグラフィック情報から分析します。
年齢・性別・デバイス・地域別の売上とCVR
GA4のユーザー属性データを活用し、年齢層別・性別・デバイス別(PC/スマートフォン/タブレット)・地域別の売上とCVRを比較します。たとえば、スマートフォンのCVRがPCより大幅に低い場合は、モバイルサイトのUI改善が優先課題です。
新規ユーザーとリピーターの購買行動比較
「新規/リピーター」をディメンションに設定し、それぞれの売上、CVR、AOVを比較します。リピーターのCVRが高い場合は、既存顧客へのメルマガ施策やリターゲティング広告の強化が有効です。
ページ6:時間帯・曜日分析ダッシュボード
時間帯・曜日分析ダッシュボードでは、売上やアクセスの時間帯・曜日パターンを把握します。ディメンションに「曜日」「時間」を設定し、指標に売上やセッション数を設定したヒートマップやテーブルを作成します。
売上が集中する曜日や時間帯を特定できれば、セール告知のタイミング、メルマガ配信のスケジュール、広告の入札強化タイミングを最適化できます。たとえば、平日の昼12時と夜21時にアクセスが集中する傾向があれば、その時間帯に合わせたプッシュ通知やSNS投稿が効果的です。
ここからは、実際にLooker Studioを操作してECサイトの売上分析ダッシュボードを構築する手順を、ステップごとに解説します。初めてLooker Studioを使う方でも、この手順に沿って進めれば完成できます。
Step1:データソースの追加とGA4プロパティの接続
Looker Studioにログインし、ホーム画面左上の「作成」→「データソース」をクリックします。コネクタ一覧から「Googleアナリティクス」を選択し、対象のGA4プロパティを選んで「接続」をクリックします。
接続が完了するとフィールド一覧画面が表示されます。ここにはGA4のすべてのディメンションと指標が一覧で表示されるので、使用したい項目が存在するか確認しましょう。確認後、右上の「レポートを作成」をクリックすれば、ダッシュボードの編集画面に遷移します。
Step2:スコアカードで売上高・注文数・CVR・AOVを表示する
ダッシュボードの最上部に、ECサイトの主要KPIを表示するスコアカードを配置します。メニューバーの「グラフを追加」から「スコアカード」を選択し、以下のように設定します。
| スコアカード | 指標の設定 | 比較期間 |
|---|---|---|
| 売上高 | purchaseRevenue | 前の期間(前月) |
| 注文数 | eコマースの購入数 | 前の期間(前月) |
| 購入率(CVR) | セッションのコンバージョン率 | 前の期間(前月) |
| AOV | 計算フィールドで作成(後述) | 前の期間(前月) |
比較期間を設定すると、前月との差分が自動で表示され、数値が上昇していれば緑色、下降していれば赤色で表示されるため、一目で状況を判断できます。
Step3:時系列グラフで売上トレンドを可視化する
スコアカードの下に、日別の売上推移を表示する折れ線グラフを配置します。「グラフを追加」→「時系列グラフ」を選択し、ディメンションに「日付」、指標に「purchaseRevenue」を設定します。
比較期間として「前の期間」を有効にすると、当月の売上ラインと前月の売上ラインが同じグラフ上に重なって表示されるため、売上ペースの比較が直感的に行えます。
Step4:テーブルで商品別売上ランキングを作成する
「グラフを追加」→「表」を選択し、ディメンションに「アイテム名」、指標に「アイテムの収益」「アイテムの数量」を設定します。並び替えで「アイテムの収益」を降順に設定すれば、売上の高い商品から順に表示される商品別売上ランキングが完成します。
表のスタイル設定で「棒グラフを表示」を有効にすると、数値の大小が視覚的に分かりやすくなります。「番号を表示」にチェックを入れると、順位番号も自動で付与されます。
Step5:円グラフでチャネル別売上構成比を表示する
「グラフを追加」→「円グラフ」を選択し、ディメンションに「セッションのデフォルトチャネルグループ」、指標に「purchaseRevenue」を設定します。自然検索、有料広告、SNS、メール、ダイレクトなどのチャネル別売上構成比が可視化されます。
スライス数は5〜7程度に抑えるのがポイントです。構成比の小さいチャネルは「その他」にまとめることで、グラフの視認性が向上します。
Step6:期間設定コントロールとフィルターを追加する
ダッシュボードの上部に「コントロールを追加」→「期間設定」を配置します。デフォルトの期間は「今月初めから今日まで」または「先月」に設定すると、日常のモニタリングに便利です。
さらに「プルダウンリスト」コントロールを追加し、ディメンションに「デバイスカテゴリ」や「セッションのデフォルトチャネルグループ」を設定すれば、閲覧者がデバイス別・チャネル別にデータを絞り込めるようになります。
Step7:スタイル・カラー・フォントを整えてブランドテーマを適用する
ダッシュボードの見た目を整えるために、「テーマとレイアウト」からカスタムテーマを設定します。
| 設定項目 | 推奨設定 |
|---|---|
| メインカラー | コーポレートカラー(例:#0066CC) |
| サブカラー | 薄い背景色(例:#F5F7FA) |
| フォント | Noto Sans JP(日本語対応) |
| グラフの色 | 3色以内で統一 |
| レポートサイズ | ワイド(1200 × 900px) |
背景色にセクションごとの区切りを入れると、ダッシュボードの構造が分かりやすくなります。ロゴ画像を左上に配置すれば、ブランドイメージに統一感が出ます。
Looker Studioの計算フィールド機能を使えば、GA4の標準指標にはない独自のKPIを作成できます。ここでは、ECサイトの売上分析で頻繁に使う計算式をコピペで使える形で紹介します。
平均注文単価(AOV)の計算式
AOV(Average Order Value)は、1回の注文あたりの平均金額を示す指標です。
フィールド名:平均注文単価(AOV)
計算式:purchaseRevenue / ecommercePurchases
データの種類:通貨(JPY)
AOVの向上には、セット割引やクロスセル(関連商品の提案)が有効です。
平均エンゲージメント時間の計算式
平均エンゲージメント時間は、1ユーザーあたりのサイト滞在時間を表します。
フィールド名:平均エンゲージメント時間
計算式:userEngagementDuration / activeUsers
データの種類:持続時間(秒)
滞在時間が短い場合は、コンテンツの質や導線設計に課題がある可能性があります。
購入率(CVR)の計算式
購入率は、サイトに訪問したセッションのうち、購入に至った割合です。
フィールド名:購入率(CVR)
計算式:ecommercePurchases / sessions * 100
データの種類:パーセント
GA4にはsessionConversionRateという標準指標もありますが、計算フィールドで独自に作成することで、他の指標と組み合わせた分析がしやすくなります。
カート放棄率の計算式
カート放棄率は、カートに商品を追加したがチェックアウトに進まなかったセッションの割合です。
フィールド名:カート放棄率
計算式:(addToCarts - ecommercePurchases) / addToCarts * 100
データの種類:パーセント
ECサイトの平均カート放棄率は約70%前後です。この数値が高い場合は、送料の明示、ゲスト購入の導入、決済手段の追加などの対策が有効です。
前月比・前年比の計算式
Looker Studioでは、比較期間機能を使えばスコアカードで自動的に前月比・前年比を表示できます。ただし、テーブルやグラフの中で前月比を表示したい場合は、データブレンディングを使用する必要があります。
スコアカードでの設定方法は以下のとおりです。
- スコアカードを選択し、「設定」タブを開く
- 「比較期間」を「前の期間」に設定
- 「詳細設定」で比較方式を「変化率」に設定
前年比を表示したい場合は、「比較期間」を「前年」に設定します。
ROAS(広告投資収益率)の計算式
ROAS(Return on Ad Spend)は、広告費用1円あたりに得られた売上金額を示す指標です。Google広告のデータソースを追加している場合に使用できます。
フィールド名:ROAS
計算式:conversionValue / cost * 100
データの種類:パーセント
ROAS 100%は損益分岐点を意味します。一般的に、ECサイトではROAS 300%以上が目標値とされることが多いです。
売上目標達成率の計算式(スプレッドシート連携)
月次の売上目標をGoogleスプレッドシートに入力し、Looker Studioに接続することで、目標達成率を自動表示できます。
スプレッドシートのデータソースとGA4のデータソースをブレンディングし、以下の計算式で目標達成率を算出します。
フィールド名:目標達成率
計算式:purchaseRevenue / 売上目標 * 100
データの種類:パーセント
スプレッドシート側に「年月」と「売上目標」の列を用意し、Looker Studio側で日付ディメンションをキーとしてブレンドすることで実現できます。
Looker StudioとGA4の基本的な連携だけでも十分な分析が可能ですが、BigQueryやスプレッドシート、広告データを組み合わせることで、さらに高度な分析を実現できます。
BigQuery連携によるコホート分析・LTV分析の実装
BigQueryは、GA4のデータをイベント単位で格納できるGoogleのデータウェアハウスサービスです。GA4の無料版でもBigQueryへのデータエクスポートが可能であり、SQLを使った高度な分析ができます。
BigQueryとLooker Studioを連携することで実現できる分析の例は以下のとおりです。
- コホート分析:初回購入月ごとにユーザーをグループ化し、その後のリピート購入率や売上推移を追跡
- LTV分析:顧客一人あたりの累計購入金額を算出し、LTVの高い顧客セグメントを特定
- RFM分析:Recency(最終購入日)、Frequency(購入頻度)、Monetary(購入金額)の3軸で顧客をセグメント化
接続方法は、Looker Studioの「データソースを追加」→「BigQuery」→対象のプロジェクト・データセット・テーブルを選択するだけです。SQLクエリを直接入力して、加工済みのデータをLooker Studioに接続する方法もあります。
スプレッドシート連携で在庫データ・売上目標を統合する
Googleスプレッドシートに在庫データや売上目標データを管理している場合、Looker Studioに接続して同一ダッシュボード上で表示できます。
スプレッドシート連携の活用例は以下のとおりです。
- 売上目標と実績の対比:月次売上目標をスプレッドシートに入力し、GA4の実績データとブレンディングして達成率を表示
- 在庫回転率の可視化:商品別の在庫数データをスプレッドシートで管理し、GA4の販売数データと組み合わせて在庫回転率を算出
- カスタムKPIの追加:GA4では取得できない独自の指標(顧客満足度、NPS等)をスプレッドシート経由で追加
Google広告・Meta広告・Yahoo広告のデータを統合したROAS比較
ECサイトでは複数の広告媒体を運用しているケースが一般的です。Looker Studioでは、各広告プラットフォームのデータを1つのダッシュボードに統合し、チャネル横断でROASを比較できます。
| 広告媒体 | 接続方法 | 取得できるデータ |
|---|---|---|
| Google広告 | 公式コネクタ(無料) | インプレッション、クリック、費用、コンバージョン |
| Meta広告 | パートナーコネクタ(有料の場合あり) | インプレッション、クリック、費用、コンバージョン |
| Yahoo広告 | パートナーコネクタ(有料の場合あり) | インプレッション、クリック、費用、コンバージョン |
各媒体のデータをブレンディングし、共通のディメンション(日付など)でまとめることで、媒体横断の広告パフォーマンスレポートが完成します。
Shopify・BASE・EC-CUBEなどカートシステム別の連携方法
利用しているECカートシステムによって、GA4やLooker Studioとの連携方法が異なります。
Shopify:GA4との連携が最も簡単です。Shopifyの管理画面からGoogleチャネルアプリをインストールし、GA4のプロパティIDを入力するだけで、add_to_cart、begin_checkout、purchaseイベントが自動的に計測されます。さらに、Shopifyの注文データをLooker Studioに直接接続するサードパーティコネクタ(CDataなど)も利用できます。
BASE:GA4のeコマース計測は手動での実装が必要です。GTM(Googleタグマネージャー)を設置し、dataLayerにeコマースイベントを送信するカスタムコードを追加します。
EC-CUBE:プラグインを使ったGA4連携が可能です。EC-CUBE公式のGA4プラグインを導入すれば、主要なeコマースイベントの計測を自動化できます。
ダッシュボードは作成して終わりではなく、継続的に運用・改善していくことで真の価値を発揮します。ここでは、日常運用で押さえるべきポイントを解説します。
共有方法の種類と使い分け(URL共有・PDF出力・メール自動配信)
Looker Studioの共有方法は、用途に応じて使い分けることが重要です。
| 共有方法 | 適した用途 | メリット |
|---|---|---|
| URL共有(閲覧権限) | 社内の日常的なデータ確認 | 常に最新データを閲覧可能 |
| URL共有(編集権限) | ダッシュボードの共同編集 | 複数人でメンテナンス可能 |
| PDFダウンロード | 月次報告資料の作成 | オフラインでも閲覧可能 |
| メール自動配信 | 経営層への定期レポート | 毎朝自動で最新数値を送信可能 |
経営層にはメール自動配信で週次・月次のサマリを送り、現場担当者にはURL共有でリアルタイムにデータを確認してもらう、という運用が効率的です。
データ更新のタイミングとキャッシュ設定の最適化
Looker Studioのデータは自動で更新されますが、キャッシュ(一時保存)の設定によって表示速度とデータの鮮度がトレードオフになります。
GA4コネクタのデータキャッシュは最大12時間です。より最新のデータを表示したい場合は、レポートの「リソース」→「追加済みのデータソースの管理」→「データの更新間隔」を短く設定します。ただし、更新頻度を上げるとページの読み込み速度が遅くなる可能性があるため、用途に応じたバランス調整が重要です。
レポートの最上部に「最終データ更新日時」を表示するテキストやスコアカードを配置しておくと、閲覧者がデータの鮮度を把握しやすくなります。
よくあるトラブルと対処法(データ欠損・表示エラー・権限エラー)
ダッシュボードの運用中に発生しやすいトラブルと、その対処法は以下のとおりです。
1. データが表示されない・0になる
- 原因:GA4のeコマースタグが正しく動作していない、データソースの認証が切れている
- 対処:GA4のリアルタイムレポートで計測確認、データソースの再認証
2. 数値がGA4管理画面と一致しない
- 原因:期間設定のズレ、フィルターの設定ミス、タイムゾーンの違い
- 対処:期間設定を同一条件に揃えて再確認
3. 「このレポートにアクセスする権限がありません」と表示される
- 原因:共有設定で対象ユーザーのGoogleアカウントが追加されていない
- 対処:「共有」→「ユーザーを追加」から対象のメールアドレスを追加
月次レビューで改善サイクルを回す方法
ダッシュボードを最大限活用するには、月に1回のレビューを実施し、改善サイクルを回すことが重要です。
レビューで確認すべきポイントは以下の3つです。
- KPIの達成状況の確認:売上目標に対する達成率、前月比・前年比の変動を確認します。
- 異常値・変動要因の特定:売上が大きく変動した日を特定し、セールやキャンペーン、広告配信などの施策との関連を分析します。
- ダッシュボード自体の改善:「見ていない指標」「追加したい指標」がないかをチームでヒアリングし、ダッシュボードを定期的にアップデートします。
本記事のポイントまとめ
本記事では、Looker Studioを使ったECサイトの売上分析ダッシュボードについて、設計から構築、運用までを体系的に解説しました。
重要なポイントを整理します。
- Looker Studioは無料で使えるGoogleのBIツールであり、GA4との公式連携でサンプリングなしの精度の高いデータ分析が可能
- EC売上はセッション数×CVR×AOVに分解でき、このKPIツリーに沿ったダッシュボード設計が効果的
- 6つのページ構成(全体サマリ、商品分析、集客チャネル分析、購買ファネル、ユーザー属性、時間帯・曜日分析)を推奨
- 計算フィールドを活用すれば、AOV、カート放棄率、ROASなどの独自KPIを作成可能
- BigQueryやスプレッドシートとの連携で、LTV分析やコホート分析などの高度な分析も実現可能
まずやるべき3ステップ
ダッシュボード構築を始めるために、まず以下の3ステップを実行しましょう。
- GA4のeコマース計測を確認する:GA4の「収益化」レポートで売上データが表示されているか確認してください。データが表示されていない場合は、eコマースイベントの実装を先に行う必要があります。
- Looker StudioとGA4を接続する:Looker Studioにログインし、GA4のデータソースを作成します。接続自体は5分程度で完了します。
- テンプレートをコピーしてカスタマイズする:本記事で紹介したテンプレートをベースに、自社のKPIに合わせたカスタマイズを行いましょう。
- Looker Studioは本当に無料で使えますか?
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Looker Studioは完全に無料で利用できます。Googleアカウントさえあれば、初期費用・月額費用・データソース接続費用のすべてが無料です。作成できるレポート数やデータソース数にも制限はありません。
ただし、一部のサードパーティ製コネクタ(Meta広告やYahoo広告との接続など)は有料の場合があります。また、BigQueryを利用する場合はクエリの実行量に応じた従量課金が発生します。GA4の公式コネクタやGoogleスプレッドシートとの接続に限れば、追加費用は一切かかりません。
なお、チームワークスペースや管理者向け機能が充実した有料版「Looker Studio Pro」も存在しますが、ECサイトの売上分析ダッシュボードを作成・運用する用途であれば、無料版で十分に対応可能です。
- GA4のeコマース計測が未実装の場合はどうすればいいですか?
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GA4のeコマース計測が未実装の場合は、ダッシュボードを構築する前にeコマースイベントの実装が必要です。実装方法は、Googleタグマネージャー(GTM)を使う方法が最も一般的です。
具体的な手順は以下のとおりです。
- GTMのコンテナをECサイトに設置する(まだ設置していない場合)
- dataLayerにeコマースイベントのコードを記述する(purchase、add_to_cart、begin_checkout、view_itemの4つが最低限必要)
- GTMでGA4イベントタグを作成し、dataLayerのデータをGA4に送信する設定を行う
- GA4のリアルタイムレポートで計測を確認する
Shopifyを利用している場合は、Googleチャネルアプリを導入するだけでpurchase、add_to_cart、begin_checkoutイベントが自動的に計測されるため、手動でのコード実装は不要です。自社で実装が難しい場合は、Web制作会社やGA4の専門家に依頼することをおすすめします。
- Looker Studioでリアルタイムの売上データは見れますか?
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Looker Studio上で完全なリアルタイムデータを表示することは難しいですが、GA4コネクタ経由のデータは最短で数時間〜12時間程度の遅延で更新されます。
データの更新速度に影響する要因は以下のとおりです。
- GA4のデータ処理遅延:GA4自体がイベントデータを処理するまでに数時間かかる場合があります
- Looker Studioのキャッシュ:Looker Studioはデータをキャッシュ(一時保存)しており、デフォルトでは最大12時間のキャッシュが適用されます
- BigQuery連携の場合:GA4からBigQueryへのエクスポートは日次バッチ処理が基本です(ストリーミングエクスポートを設定すれば、数分程度の遅延に短縮可能)
リアルタイムの売上状況を確認したい場合は、GA4管理画面の「リアルタイム」レポートを併用するのが実用的です。Looker Studioのダッシュボードは、日次・週次・月次の分析用として運用するのが最も効果的な使い方です。
引用元・参考情報一覧
インハウスプラス:GA4×Looker Studio ECサイト向けガイド
カラーミーショップ:GA4×Looker Studioで指標を可視化

