GTMタグマネージャーの変数とは?使い方を初心者向けに徹底解説【2025年最新版】
「Googleタグマネージャーの変数って何?どうやって使うの?」とお悩みではありませんか?
Googleタグマネージャー(GTM)を使い始めたものの、変数の設定方法がわからず計測が上手くいかない方は少なくありません。変数はGTMの中核機能であり、正しく理解することでタグの管理効率が劇的に向上します。
本記事では、GTMの変数とは何か、組み込み変数とユーザー定義変数の違い、具体的な設定手順まで、初心者の方でも実践できるよう画像付きで徹底解説します。
この記事を読めば、変数を使った柔軟なタグ管理ができるようになり、ページごとの計測設定やコンバージョン値の動的取得など、実務で即活用できる知識が身につきます。
さあ、GTM変数をマスターして、データ計測の精度を高めましょう。
目次
Googleタグマネージャー(GTM)の変数とは?基礎知識を理解する
GTMにおける変数の役割と仕組み
変数とは、タグやトリガーで使用する動的なデータを格納・参照するための「入れ物」です。
GTMは「タグ」「トリガー」「変数」の3つの要素で構成されており、変数はこの中で「データの受け渡し役」を担います。例えば、ページURLやクリックされたボタンのテキスト、データレイヤーから取得した商品価格など、様々な情報を変数として定義することで、タグやトリガーから参照できるようになります。
変数の仕組みは以下の通りです。
- データの取得: ページ情報やユーザー行動から値を取得
- データの格納: 取得した値を変数として保管
- データの参照: タグやトリガーから変数を呼び出して利用
変数を使うことで、タグの設定を柔軟かつ効率的に管理できます。例えば、全ページで同じタグを使いながら、ページごとに異なるパラメータを送信することも可能になります。変数はGTMを使いこなす上で必須の知識といえるでしょう。
変数で取得できるデータの種類
変数では、ページ情報、ユーザー行動、カスタムデータなど、多様なデータを取得できます。
GTMの変数で取得できる主なデータは以下の通りです。
ページ関連のデータ
- ページURL(完全なURL)
- ページパス(ドメイン以降の部分)
- ページタイトル
- 参照元URL(リファラー)
- URLクエリパラメータ
ユーザー行動のデータ
- クリックされた要素(ボタン、リンクなど)
- クリック要素のテキスト
- クリック要素のクラス名やID
- フォーム送信時のデータ
- スクロール深度
カスタムデータ
- データレイヤーの値(商品名、価格、カテゴリなど)
- Cookie情報
- ローカルストレージの値
- JavaScriptで計算した値
これらのデータは「動的データ」と「静的データ」に分類できます。動的データはページやユーザー行動によって変化する値(ページURLやクリック要素など)、静的データは変化しない固定値(コンテナIDや定数など)です。
変数を適切に設定することで、計測精度が飛躍的に向上し、より詳細なデータ分析が可能になります。
変数の2つの種類を知る
GTMの変数は「組み込み変数」と「ユーザー定義変数」の2種類に分けられます。
組み込み変数 組み込み変数はGTMに最初から用意されている標準的な変数です。主な特徴は以下の通りです。
- GTM管理画面でチェックを入れるだけで有効化できる
- ページURL、クリック要素など、よく使うデータがプリセットされている
- 初期状態では一部のみが有効化されている
- コーディング不要で簡単に利用できる
ユーザー定義変数 ユーザー定義変数は、組み込み変数で対応できないカスタムデータを扱うために自分で作成する変数です。
- データレイヤーの値を取得
- JavaScriptで独自の計算や処理を実行
- Cookie値やローカルストレージの参照
- 正規表現やルックアップテーブルによる値の変換
使い分け方 基本的には組み込み変数で対応できるケースが多いため、まずは組み込み変数の有効化から始めましょう。組み込み変数で取得できないデータが必要になった場合に、ユーザー定義変数を作成します。例えば、データレイヤーから商品情報を取得する場合や、特殊な計算が必要な場合はユーザー定義変数が必要です。
GTM組み込み変数の使い方【設定手順を画像付きで解説】
組み込み変数の有効化方法
組み込み変数の有効化は、GTM管理画面の「変数」メニューから数クリックで完了します。
組み込み変数を有効化する手順は以下の通りです。
- GTMコンテナにログイン
- Googleタグマネージャーにアクセスし、対象のコンテナを開きます
- 「変数」メニューを選択
- 左サイドバーから「変数」をクリックします
- 「設定」ボタンをクリック
- 「組み込み変数」セクションの右上にある「設定」ボタンをクリックします
- 必要な変数にチェックを入れる
- 利用したい組み込み変数の横にあるチェックボックスにチェックを入れます
- 複数選択可能です
- 変数一覧で確認
- チェックを入れた変数が「組み込み変数」セクションに表示されれば設定完了です
有効化した組み込み変数は、トリガーやタグの設定画面で「{{変数名}}」の形式で選択できるようになります。初期設定では「Page URL」「Page Path」「Click Element」などの基本的な変数のみが有効化されているため、必要に応じて追加していきましょう。
なお、組み込み変数の有効化だけではタグは発火しません。タグとトリガーの設定も合わせて行う必要があります。
主要な組み込み変数一覧と用途
GTMには20種類以上の組み込み変数があり、それぞれ特定のデータ取得に最適化されています。
実務でよく使う主要な組み込み変数と用途を紹介します。
| 変数名 | 取得データ | 主な用途 |
|---|---|---|
| Page URL | ページの完全なURL | 特定URLでのタグ発火条件 |
| Page Path | ドメイン以降のパス | サンクスページなどの判定 |
| Page Hostname | ドメイン名 | 本番環境と検証環境の切り分け |
| Referrer | 参照元URL | 流入元の分析 |
| Click Element | クリックされたHTML要素 | ボタンやリンクの特定 |
| Click Classes | クリック要素のclass属性 | 特定クラスのクリック計測 |
| Click ID | クリック要素のID属性 | 特定IDのクリック計測 |
| Click Text | クリック要素のテキスト | ボタン名での計測 |
| Form Element | 送信されたフォーム要素 | フォーム送信の計測 |
ページ系変数の使い分け
- Page URL:
https://example.com/products?category=shoesのような完全なURLが必要な場合 - Page Path:
/productsのようなパス部分だけで判定したい場合 - Page Hostname:
example.comのようなドメインで環境を判別したい場合
クリック系変数の使い分け
- Click Element: HTML要素そのものを参照する場合(上級者向け)
- Click Classes: class属性で判定する場合(推奨)
- Click Text: ボタンの文言で判定する場合(シンプルで分かりやすい)
これらの組み込み変数を適切に使い分けることで、ほとんどの基本的な計測ニーズに対応できます。
組み込み変数をトリガーで活用する方法
組み込み変数は、トリガーの発火条件として設定することで、タグを柔軟に制御できます。
組み込み変数をトリガーで活用する具体的な方法を解説します。
基本的な設定手順
- トリガーを新規作成
- 「トリガー」メニューから「新規」をクリック
- トリガータイプを選択
- 「ページビュー」「クリック」などのタイプを選択
- 条件を追加
- 「このトリガーの発火条件」で組み込み変数を使った条件を設定
実践例1: サンクスページでのみタグを発火
トリガータイプ: ページビュー
発火条件: Page Path / 含む / /thanks
この設定により、URLに「/thanks」を含むページでのみタグが発火します。コンバージョン計測などに活用できます。
実践例2: 特定のボタンクリックを計測
トリガータイプ: すべての要素
発火条件: Click Text / 等しい / お問い合わせ
「お問い合わせ」というテキストのボタンがクリックされた時にタグが発火します。
実践例3: 外部サイトへのリンククリックを計測
トリガータイプ: リンクのみ
発火条件: Click URL / 含まない / example.com
自社ドメイン以外へのリンククリックを計測できます。
組み込み変数とトリガーを組み合わせることで、特定ページでのタグ発火制御、ユーザー行動の詳細な追跡が可能になります。
GTMユーザー定義変数の作成方法【ステップバイステップ】
ユーザー定義変数が必要なケース
組み込み変数で取得できないカスタムデータや、独自の計算・加工が必要な場合にユーザー定義変数を作成します。
ユーザー定義変数が必要となる主なケースを紹介します。
1. データレイヤーから値を取得する場合 ECサイトで商品名、価格、カテゴリなどをデータレイヤーに格納している場合、これらの値を取得するにはユーザー定義変数が必要です。組み込み変数ではデータレイヤーにアクセスできません。
2. URLパラメータを取得する場合 https://example.com/?utm_source=google&campaign=summerのようなURLから、特定のパラメータ値(utm_sourceやcampaign)を抽出したい場合に使用します。
3. Cookieやローカルストレージの値を参照する場合 ユーザーIDやセッション情報など、Cookieやローカルストレージに保存された値を計測に活用したい場合に必要です。
4. JavaScriptで独自の計算や処理をする場合
- スクロール率の計算
- 日時の取得とフォーマット変換
- 文字列の加工や結合
- 条件分岐による値の出し分け
5. 固定値を定数として管理する場合 Google広告のコンバージョンIDなど、複数のタグで共通して使用する固定値を一元管理したい場合、定数変数として設定します。変更時に一箇所を修正するだけで済むため、運用効率が向上します。
このように、組み込み変数では対応できない柔軟なデータ取得や加工が必要な場合に、ユーザー定義変数を作成します。
ユーザー定義変数の作成手順
ユーザー定義変数の作成は、変数タイプの選択と必要なパラメータの設定という2ステップで完了します。
ユーザー定義変数を作成する基本手順を解説します。
作成手順
- 変数メニューから新規作成
- GTM管理画面で「変数」→「ユーザー定義変数」セクションの「新規」をクリック
- 変数の設定をクリック
- 変数設定画面で上部の設定アイコンをクリック
- 変数タイプを選択
- 利用目的に応じた変数タイプを選択(データレイヤー変数、カスタムJavaScriptなど)
- パラメータを入力
- 選択した変数タイプに応じて必要な情報を入力
- データレイヤー変数なら「データレイヤー変数名」、URLパラメータなら「クエリキー」など
- 変数名を付けて保存
- 分かりやすい変数名を入力(例: DL – Product Name、URL – Campaign ID)
- 右上の「保存」をクリック
変数名の命名規則のベストプラクティス
- プレフィックスを活用: 変数タイプが分かるように接頭辞を付ける
- データレイヤー変数:
DL - 商品名 - URL変数:
URL - キャンペーンID - JavaScript変数:
JS - スクロール率
- データレイヤー変数:
- 日本語でOK: 運用チーム全員が理解しやすい名前を付ける
- 一貫性を保つ: チーム内でルールを統一する
作成したユーザー定義変数は、組み込み変数と同様にトリガーやタグから{{変数名}}の形式で参照できます。
主要な変数タイプと設定方法
GTMには15種類以上のユーザー定義変数タイプがあり、用途に応じて使い分けます。
実務でよく使う主要な変数タイプと設定方法を紹介します。
1. データレイヤー変数 データレイヤーに格納された値を取得する最も重要な変数タイプです。
設定項目:
- データレイヤー変数名:
ecommerce.purchase.products.0.nameのように階層構造で指定 - データレイヤーバージョン: 通常は「バージョン2」を選択
2. カスタムJavaScript変数 JavaScriptコードを実行して独自の値を返す変数です。
設定例(現在のページタイトルを取得):
function() {
return document.title;
}
3. URLパラメータ変数 URLのクエリパラメータから特定の値を抽出します。
設定項目:
- クエリキー: 取得したいパラメータ名(例:
utm_source)
4. 定数変数 固定値を設定する変数で、複数タグで共通の値を一元管理できます。
設定項目:
- 値: 固定値を入力(例: Google広告のコンバージョンID)
5. Cookie変数 Cookieに保存された値を取得します。
設定項目:
- Cookie名: 取得したいCookieの名前
- URLデコード: 必要に応じてチェック
これらの変数タイプを適切に使い分けることで、ほぼすべてのデータ取得ニーズに対応できます。まずはデータレイヤー変数とURL変数から始めることをお勧めします。
データレイヤー変数の実装と使い方
データレイヤーとは?基本概念
データレイヤーは、ウェブサイトからGTMにデータを渡すためのJavaScriptオブジェクトです。
データレイヤーの基本概念を理解しましょう。
データレイヤーはdataLayerという名前のJavaScript配列で、ページに埋め込まれています。この配列に商品情報、ユーザー情報、イベント情報などを格納することで、GTMから自由にアクセスできるようになります。
データレイヤーの基本構造
<script>
window.dataLayer = window.dataLayer || [];
dataLayer.push({
'event': 'purchase',
'ecommerce': {
'purchase': {
'products': [{
'name': 'ワイヤレスマウス',
'price': 2980,
'category': '周辺機器'
}]
}
}
});
</script>
GTMとの連携方法
- 開発者がデータレイヤーをページに実装: 上記のようなコードをHTMLに埋め込む
- GTMでデータレイヤー変数を作成: データレイヤーから必要な値を取得する変数を設定
- タグやトリガーで変数を利用: 取得した値をGA4やGoogle広告に送信
eコマースデータの活用例 ECサイトでは、以下のような情報をデータレイヤーに格納することで、詳細な購買分析が可能になります。
- 商品名、価格、カテゴリ
- トランザクションID、購入金額
- クーポン使用状況
- 配送方法
データレイヤーを活用することで、GTMだけでは取得できない高度なビジネスデータを計測に組み込めます。開発者との連携が必要ですが、データ分析の精度が格段に向上します。
データレイヤー変数の設定手順
データレイヤー変数は、データレイヤーキーを指定するだけで簡単に作成できます。
データレイヤー変数を設定する具体的な手順を解説します。
設定手順
- ユーザー定義変数を新規作成
- 「変数」→「ユーザー定義変数」→「新規」
- 変数タイプで「データレイヤーの変数」を選択
- 変数設定画面で「データレイヤーの変数」を選択
- データレイヤー変数名を入力
- データレイヤーの階層構造に応じてキーを指定
- 例:
ecommerce.purchase.products.0.name
- データレイヤーバージョンを選択
- 通常は「バージョン2」を選択(推奨)
- 変数名を付けて保存
- 例:
DL - 商品名
- 例:
データレイヤーキーの指定方法
データレイヤーが以下のような構造の場合:
dataLayer.push({
'ecommerce': {
'purchase': {
'products': [{
'name': 'ワイヤレスマウス',
'price': 2980
}]
}
}
});
取得したい値に応じて、以下のようにキーを指定します。
- 商品名を取得:
ecommerce.purchase.products.0.name - 価格を取得:
ecommerce.purchase.products.0.price - 配列の最初の要素は
0、2番目は1とインデックスで指定
タグへの動的値の挿入方法
作成したデータレイヤー変数は、タグの設定画面で{{変数名}}の形式で挿入できます。例えば、GA4イベントタグのイベントパラメータに{{DL - 商品名}}を設定することで、動的に商品名を送信できます。
データレイヤー変数を使うことで、静的なタグ設定では不可能だった柔軟なデータ送信が実現します。
データレイヤーのデバッグ方法
プレビューモードとブラウザの開発者ツールを併用することで、データレイヤーの動作を検証できます。
データレイヤー変数が正しく動作しているか確認する方法を解説します。
プレビューモードでの確認手順
- プレビューモードを起動
- GTM管理画面右上の「プレビュー」をクリック
- 確認したいページのURLを入力して接続
- イベントを選択
- プレビュー画面で該当のイベント(例: purchase)をクリック
- Variablesタブで変数値を確認
- 「Variables」タブを開き、作成したデータレイヤー変数の値を確認
- 期待した値が表示されていればOK
ブラウザの開発者ツールでの確認
- コンソールを開く
- Chrome: F12キー → Consoleタブ
- データレイヤーを出力
- コンソールに
dataLayerと入力してEnter - データレイヤーの全内容が配列形式で表示されます
- コンソールに
- 特定の値を確認
dataLayer[0].ecommerce.purchase.products[0].nameのように階層を辿って値を確認
値が取得できない場合のトラブルシューティング
| 問題 | 原因 | 解決策 |
|---|---|---|
変数がundefined | データレイヤーキーの指定が間違っている | 開発者ツールで正確なキー構造を確認 |
| 値が空 | データレイヤーのpushタイミングが遅い | イベントドリブンなトリガーで発火タイミングを調整 |
| 古い値が表示される | データレイヤーバージョンの設定ミス | バージョン2を選択 |
データレイヤーのデバッグは最初は難しく感じるかもしれませんが、プレビューモードと開発者ツールを使いこなせば、確実に問題を特定できます。
カスタムJavaScript変数の活用テクニック
カスタムJavaScript変数とは
カスタムJavaScript変数は、JavaScriptコードを実行して独自の値を返す変数で、標準変数では対応できないデータ取得を可能にします。
カスタムJavaScript変数の基本を理解しましょう。
カスタムJavaScript変数では、関数形式でJavaScriptコードを記述し、return文で値を返します。この仕組みにより、ブラウザのAPIやDOM操作を活用した柔軟なデータ取得が可能になります。
基本的な記述形式
function() {
// ここに処理を記述
return 値;
}
JavaScriptコードの記述方法
例1: 現在の日時を取得
function() {
var now = new Date();
return now.toISOString();
}
例2: ページのスクロール率を計算
function() {
var scrollTop = window.pageYOffset;
var docHeight = document.documentElement.scrollHeight;
var winHeight = window.innerHeight;
var scrollPercent = scrollTop / (docHeight - winHeight) * 100;
return Math.round(scrollPercent);
}
セキュリティ上の注意点
カスタムJavaScript変数を使用する際は、以下のセキュリティリスクに注意が必要です。
- XSS攻撃のリスク: ユーザー入力値を直接使用しない
- 個人情報の扱い: メールアドレスやパスワードなどを取得しない
- サードパーティスクリプトの実行: 信頼できないコードを実行しない
また、JavaScriptのエラーが発生すると変数がundefinedを返すため、try-catch文でエラーハンドリングを行うことを推奨します。
カスタムJavaScript変数は強力な機能ですが、適切に使用することでGTMの可能性を大きく広げられます。
カスタムJavaScript変数の実装例
実務でよく使うカスタムJavaScript変数の実装例を紹介します。
実践的なコード例を3つ解説します。
実装例1: スクロール率の取得
ユーザーがページをどれだけスクロールしたかを百分率で取得します。
function() {
var scrollTop = window.pageYOffset || document.documentElement.scrollTop;
var docHeight = document.documentElement.scrollHeight;
var winHeight = window.innerHeight;
if (docHeight === winHeight) {
return 100; // ページが1画面に収まる場合
}
var scrollPercent = (scrollTop / (docHeight - winHeight)) * 100;
return Math.round(scrollPercent);
}
活用シーン: 「75%スクロール」をコンバージョンとして計測する場合など
実装例2: フォーム入力値の取得
特定のフォーム要素の入力値を取得します。
function() {
var emailField = document.querySelector('input[name="email"]');
if (emailField && emailField.value) {
// メールアドレスのドメイン部分のみを取得(個人情報保護)
var email = emailField.value;
var domain = email.split('@')[1];
return domain || 'unknown';
}
return 'not-filled';
}
活用シーン: フォーム送信時に企業ドメインを分析する場合
実装例3: ローカルストレージからのデータ取得
ローカルストレージに保存されたユーザー属性を取得します。
function() {
try {
var userData = localStorage.getItem('user_segment');
return userData || 'not-set';
} catch(e) {
return 'error';
}
}
活用シーン: 会員ステータスに応じてタグの発火を制御する場合
これらの実装例を参考に、自社のビジネスニーズに合わせたカスタムJavaScript変数を作成してください。エラーハンドリングとデフォルト値の設定を忘れずに行いましょう。
GTM変数の実践的な活用事例【目的別】
トリガー条件での変数活用
変数をトリガーの発火条件として設定することで、特定の状況下でのみタグを実行できます。
トリガー条件での変数活用例を紹介します。
活用例1: 特定ページでのタグ発火制御
サンクスページでのみコンバージョンタグを発火させる設定です。
トリガー設定:
- トリガータイプ: ページビュー – DOM Ready
- 発火条件:
Page Path/ 含む //thanks/
この設定により、URLに「/thanks/」を含むページでのみタグが発火します。二重計測を防ぐため、「このトリガーは1ページにつき1回のみ発動」にチェックを入れることを推奨します。
活用例2: クリック要素の判定
特定のCSSクラスを持つボタンがクリックされた時のみタグを発火させます。
トリガー設定:
- トリガータイプ: すべての要素
- 発火条件:
Click Classes/ 含む /cta-button
この方法は、複数のCTAボタンに同じクラスを付与しておくことで、一つのトリガーで全てのCTAクリックを計測できる効率的な手法です。
活用例3: URLパラメータによる条件分岐
広告経由のアクセスのみを計測する設定です。
トリガー設定:
- トリガータイプ: ページビュー
- 発火条件:
URL/ 含む /utm_source=
URLにutm_sourceパラメータが含まれる場合のみタグが発火するため、広告キャンペーンの効果測定に活用できます。
変数を活用したトリガー設定により、無駄なタグ発火を減らし、必要なデータのみを効率的に収集できます。
タグへの動的値挿入
変数を使うことで、タグに送信する値を動的に変更できます。
タグへの動的値挿入の実践例を紹介します。
活用例1: Google広告コンバージョン値の動的設定
ECサイトで購入金額を動的にGoogle広告に送信する設定です。
前提: データレイヤー変数{{DL - 購入金額}}を作成済み
Google広告コンバージョンタグの設定:
- コンバージョン値:
{{DL - 購入金額}} - 通貨コード: JPY
この設定により、ユーザーごとに異なる購入金額を自動的にGoogle広告に送信でき、正確なROAS計測が可能になります。
活用例2: GA4イベントパラメータへの変数利用
GA4のイベントタグに商品情報を動的に付与します。
GA4イベントタグの設定:
- イベント名:
purchase - イベントパラメータ:
product_name:{{DL - 商品名}}product_category:{{DL - カテゴリ}}value:{{DL - 購入金額}}
これにより、GA4で商品別の購入分析が可能になります。
活用例3: カスタムディメンションの設定
ユーザー属性を変数で取得し、カスタムディメンションとして送信します。
設定例:
- カスタムディメンション「会員ステータス」:
{{JS - 会員ランク}} - カスタムディメンション「訪問回数」:
{{Cookie - visit_count}}
動的値の挿入により、静的な設定では不可能だった柔軟なデータ送信が実現し、分析の幅が大きく広がります。
eコマーストラッキングでの変数活用
eコマーストラッキングでは、データレイヤー変数を活用することで商品情報を自動的に取得・送信できます。
eコマーストラッキングでの変数活用方法を解説します。
商品名・価格・カテゴリの取得
ECサイトでは、以下のようなデータレイヤー変数を作成します。
| 変数名 | データレイヤーキー | 用途 |
|---|---|---|
| DL – 商品名 | ecommerce.detail.products.0.name | 商品詳細ページで商品名を取得 |
| DL – 商品価格 | ecommerce.detail.products.0.price | 価格情報を取得 |
| DL – 商品カテゴリ | ecommerce.detail.products.0.category | カテゴリ情報を取得 |
トランザクションIDの動的設定
購入完了時にユニークなトランザクションIDを取得します。
データレイヤー変数の設定:
- 変数名:
DL - トランザクションID - データレイヤー変数名:
ecommerce.purchase.actionField.id
この変数をGA4の購入イベントタグのtransaction_idパラメータに設定することで、重複購入の除外が可能になります。
購入完了ページでの実装例
購入完了ページのデータレイヤー実装例:
dataLayer.push({
'event': 'purchase',
'ecommerce': {
'purchase': {
'actionField': {
'id': 'T12345',
'revenue': '15960',
'tax': '1596',
'shipping': '0'
},
'products': [{
'name': 'ワイヤレスマウス',
'price': '2980',
'category': '周辺機器',
'quantity': 1
}]
}
}
});
GTM側では、上記で作成した変数を使ってGA4やGoogle広告に購入情報を送信します。開発者と連携してデータレイヤーを実装することで、高度なeコマース分析が可能になります。
GTM変数のテストとデバッグ方法
プレビューモードでの変数確認
プレビューモードを使うことで、タグを本番環境に公開する前に変数の動作を確認できます。
プレビューモードでの変数確認方法を詳しく解説します。
プレビューモードの起動手順
- プレビューを開始
- GTM管理画面右上の「プレビュー」ボタンをクリック
- Tag Assistant接続画面が表示
- 「Your website’s URL」に確認したいページのURLを入力
- 「Connect」をクリック
- 新しいタブが開く
- 対象サイトが新しいタブで開き、下部にTag Assistantパネルが表示されます
- 接続を確認
- 元のGTMタブに「Connected!」と表示されればOK
変数値のリアルタイム確認方法
Tag Assistantパネルでの確認手順:
- イベントを選択
- 左側のイベント一覧から確認したいイベント(例: Page View)をクリック
- Variablesタブを開く
- 右側パネルの「Variables」タブをクリック
- 変数値を確認
- 作成した変数名を探し、現在の値を確認
- 値が期待通りであればOK、異なる場合は設定を見直す
Variablesタブの見方
Variablesタブには以下の情報が表示されます。
- Variable Name: 変数名
- Value: 現在の値(赤字は
undefinedを示す) - Type: 変数タイプ(Built-in/User-Defined)
注目すべきポイント:
- 値が
undefinedの場合は設定ミスの可能性 - 期待した値と異なる場合は、データレイヤーの実装やキーの指定を確認
- 変数が一覧に表示されない場合は、トリガーの発火タイミングを確認
プレビューモードを使いこなすことで、本番環境でのトラブルを未然に防げます。変数を作成したら必ずプレビューで動作確認を行いましょう。
よくあるエラーと対処法
変数設定でよく発生するエラーとその解決策を知っておくことで、トラブルシューティングが効率化します。
実務でよく遭遇するエラーと対処法を紹介します。
エラー1: 変数が「undefined」になる
原因:
- データレイヤーキーの指定が間違っている
- データレイヤーのpushタイミングがGTM実行より遅い
- 該当のデータレイヤー値が存在しない
対処法:
- ブラウザの開発者ツールでデータレイヤーの構造を確認し、正確なキーを指定
- イベントドリブンなトリガー(カスタムイベント)を使用してタイミングを制御
- デフォルト値の設定機能を活用する
エラー2: 値が取得できない
| 症状 | 原因 | 解決策 |
|---|---|---|
| 空文字が返る | タイミングの問題 | トリガーの発火条件を「DOM Ready」に変更 |
| 古い値が取得される | データレイヤーバージョンの設定ミス | 「バージョン2」を選択 |
| 変数自体が見つからない | 変数名のスペルミス | プレビューモードで変数一覧を確認 |
エラー3: 二重計測が発生する
原因:
- 同じページで複数回トリガーが発火している
- SPAでページ遷移時に意図せずタグが発火
対処法:
- トリガーに「このトリガーは1ページにつき1回のみ発動」を設定
- 除外トリガーを使って特定の条件下では発火しないよう制御
- プレビューモードでタグの発火回数を確認
二重計測を防ぐためのチェックポイント
- トリガーの発火回数を確認
- プレビューモードの「Tags Fired」セクションで同じタグが複数回表示されていないか確認
- 除外条件を設定
- 例: 管理画面のプレビューURLでは発火しないよう除外
- イベントの重複をチェック
- データレイヤーで同じイベントが複数回pushされていないか確認
エラーが発生した際は、プレビューモードとブラウザの開発者ツールを併用して原因を特定することが重要です。
Googleタグアシスタントの活用
Googleタグアシスタント(旧Tag Assistant Legacy)は、タグの実装状況を視覚的に確認できるChrome拡張機能です。
Googleタグアシスタントを使った効率的なデバッグ方法を解説します。
Chrome拡張機能のインストール
- Chrome ウェブストアにアクセス
- 「Tag Assistant Companion」で検索
- 拡張機能を追加
- 「Chromeに追加」→「拡張機能を追加」をクリック
- ツールバーにピン留め
- 拡張機能アイコンをクリックして使いやすい位置に配置
タグの発火状況と変数値の確認
- レコーディングを開始
- 確認したいページでTag Assistantアイコンをクリック
- 「Record」をクリックしてレコーディングを開始
- ページ操作を実行
- ボタンクリック、フォーム送信など、計測したいアクションを実行
- レコーディングを停止
- Tag Assistantで「Stop Recording」をクリック
- タグの詳細を確認
- 発火したタグ一覧が表示される
- 各タグをクリックすると、送信されたパラメータや変数値を確認可能
デバッグの効率化テクニック
- フィルター機能の活用: GTMタグのみを表示してノイズを削減
- エラーマークに注目: 赤いエラーマークが付いているタグを優先的に確認
- 変数値のコピー: 変数値をコピーして、期待値と比較
Tag Assistantを使うことで、プレビューモードよりも詳細なタグの発火状況を確認でき、特に複雑な実装のデバッグに威力を発揮します。GTM運用者必須のツールです。
GTM変数設定のベストプラクティスと注意点
変数命名規則とコンテナ管理
統一された命名規則と整理されたコンテナ管理は、チーム運用とメンテナンス性の向上に不可欠です。
変数の命名規則とコンテナ管理のベストプラクティスを紹介します。
わかりやすい変数名の付け方
効果的な命名規則の例:
- プレフィックスを活用
DL -: データレイヤー変数URL -: URLパラメータ変数JS -: カスタムJavaScript変数Const -: 定数変数Cookie -: Cookie変数
- 具体的で分かりやすい名前
- 良い例:
DL - 商品名、URL - UTMソース - 悪い例:
変数1、data、test
- 良い例:
- 英語と日本語の使い分け
- 日本語チームなら日本語でOK(例:
DL - 購入金額) - 英語表記の例:
DL - Product Name
- 日本語チームなら日本語でOK(例:
フォルダによる整理方法
GTMではフォルダ機能を使って変数を分類できます。
推奨フォルダ構成:
- 計測用変数: GA4やGoogle広告で使用する変数
- 条件判定用変数: トリガーの発火条件に使う変数
- 定数: 固定値を格納する変数
- テスト用: 検証中の変数(本番移行後は削除)
フォルダは「変数」画面右上の「フォルダを管理」から作成できます。
チームでの運用ルール
複数人でGTMを運用する際の推奨ルール:
- 命名規則を文書化
- チーム内でルールを共有し、必ず守る
- 変更履歴をメモ
- バージョン説明に「誰が」「何を」「なぜ変更したか」を記載
- 定期的な棚卸し
- 使われていない変数を四半期ごとに削除
- 権限管理
- 承認フローを設定し、誤った公開を防ぐ
整理されたコンテナは、トラブルシューティングの時間を大幅に短縮し、チーム全体の生産性を向上させます。
パフォーマンスへの影響
過剰な変数設定やJavaScriptの実行はページ速度に影響を与える可能性があるため、適切な設計が重要です。
パフォーマンスへの影響を最小限に抑える方法を解説します。
過剰な変数設定の回避
不要な変数はページ読み込みのオーバーヘッドになります。
推奨事項:
- 使用していない変数は削除: 定期的に棚卸しを実施
- 組み込み変数は必要なものだけ有効化: 全て有効化する必要はない
- 重複する変数を統合: 同じ値を取得する変数が複数ある場合は一つに集約
JavaScriptの実行タイミング
カスタムJavaScript変数の実行タイミングに注意しましょう。
| タイミング | 影響 | 推奨用途 |
|---|---|---|
| ページビュー時 | ページ表示速度に直接影響 | 軽量な処理のみ |
| イベント発火時 | ユーザー操作後なので影響小 | 重い処理も可能 |
| DOM Ready後 | DOM構築後なので比較的安全 | DOM操作が必要な場合 |
最適化のポイント:
- 複雑な計算はイベント発火時に実行
- DOMクエリ(
document.querySelector)は最小限に - 結果をキャッシュして再計算を避ける
ページ速度への配慮
GTMがページ速度に与える影響を最小化するテクニック:
- 非同期タグの活用
- カスタムHTMLタグで
<script async>を使用
- カスタムHTMLタグで
- タグの統合
- 同じタイミングで発火する複数のタグを一つに統合できないか検討
- トリガーの最適化
- 「すべての要素」トリガーは負荷が高いため、より具体的な条件に絞る
- 定期的なパフォーマンス計測
- Google PageSpeed Insightsで定期的に速度をチェック
適切な変数設計とパフォーマンスへの配慮により、計測精度を保ちながら快適なユーザー体験を提供できます。
セキュリティとプライバシー対策
GTM変数を扱う際は、個人情報保護とセキュリティリスクへの対策が必須です。
セキュリティとプライバシーを守るためのベストプラクティスを解説します。
個人情報の扱い方
絶対に避けるべき実装:
- メールアドレス全体の取得・送信
- 電話番号の計測
- クレジットカード番号などの決済情報
- パスワードやログイン情報
- マイナンバーや免許証番号
許容される実装例:
- メールアドレスのドメイン部分のみ(例:
gmail.com) - ユーザーIDのハッシュ化した値
- 年代(30代、40代など)での集計
データレイヤーへの機密情報の非掲載
開発者に依頼する際の注意点:
// NG例: 個人情報を含むデータレイヤー
dataLayer.push({
'email': 'user@example.com', // NG
'phone': '090-1234-5678' // NG
});
// OK例: 加工済みデータ
dataLayer.push({
'email_domain': 'example.com', // OK
'user_segment': 'premium' // OK
});
GDPR/Cookie規制への対応
EU圏やカリフォルニア州のユーザーに対しては、Cookie同意管理が必要です。
対応方法:
- Cookie同意バナーの実装
- ユーザーの同意を得るまでタグを発火させない
- 同意管理プラットフォーム(CMP)の活用
- OneTrust、Cookiebotなどのツールと連携
- GTMでの同意モード設定
- Google同意モードv2を実装し、同意状況に応じてタグの動作を制御
Cookie変数使用時の注意
- トラッキングCookieを使用する場合は同意取得が必須
- ファーストパーティCookieであっても用途を明示
- Cookie有効期限を必要最小限に設定
セキュリティとプライバシーへの配慮は、法令遵守だけでなく、ユーザーからの信頼獲得にも繋がります。慎重に設計しましょう。
GTM変数の応用テクニック【上級者向け】
正規表現テーブル変数の活用
正規表現テーブル変数を使うことで、複雑な条件分岐やパターンマッチングを一つの変数で実現できます。
正規表現テーブル変数の基本と活用方法を解説します。
正規表現テーブル変数は、入力値に対して正規表現パターンでマッチングを行い、対応する出力値を返す変数です。複数の条件分岐を一つの変数で管理できるため、コンテナがシンプルになります。
複雑な条件分岐の実装
例: URLパスからページタイプを判定する
設定例:
| パターン | 出力値 |
|---|---|
^/products/.* | 商品ページ |
^/category/.* | カテゴリページ |
^/cart | カートページ |
^/$ | トップページ |
.* | その他 |
入力変数: {{Page Path}}
この設定により、URLパスから自動的にページタイプを判定し、GA4のカスタムディメンションとして送信できます。
URL書き換えルールの設定
例: 動的なURLを静的な名前に変換
設定例:
| パターン | 出力値 |
|---|---|
.*/products/(\d+).* | 商品詳細ページ |
.*/users/(\d+)/profile | プロフィールページ |
.* | 一般ページ |
正規表現の()でキャプチャした値を$1、$2で参照することも可能です。
注意点
- パターンは上から順に評価されるため、具体的なパターンを上に配置
- 最後に
.*でデフォルト値を設定しておく - 複雑すぎる正規表現は避け、メンテナンス性を重視
正規表現テーブル変数は強力ですが、複雑になりすぎるとトラブルシューティングが困難になります。適度な粒度で設計しましょう。
ルックアップテーブル変数
ルックアップテーブル変数は、値の変換や置き換えを行う変数で、データの正規化に活用できます。
ルックアップテーブル変数の使い方を解説します。
ルックアップテーブル変数は、入力値に完全一致する行を探し、対応する出力値を返します。正規表現テーブルとは異なり、パターンマッチングではなく完全一致で判定します。
値の変換と置き換え
例: UTMソースを分かりやすい名前に変換
設定例:
| 入力 | 出力 |
|---|---|
| Google検索 | |
| yahoo | Yahoo検索 |
| Facebook広告 | |
| Twitter広告 | |
| (default) | その他 |
入力変数: {{URL - utm_source}}
この設定により、?utm_source=googleのURLでアクセスしたユーザーに対して「Google検索」という分かりやすいラベルを付けられます。
キャンペーン名の自動分類
例: キャンペーンIDを部門別に分類
設定例:
| 入力 | 出力 |
|---|---|
| camp_sales_2025q1 | 営業部門 |
| camp_marketing_2025q1 | マーケティング部門 |
| camp_product_2025q1 | 商品部門 |
入力変数: {{URL - utm_campaign}}
活用シーン
- 広告媒体名の日本語化
- 商品コードからカテゴリへの変換
- ユーザーセグメントのラベル付け
- 環境(本番/ステージング)の判定
正規表現テーブルとの使い分け
- ルックアップテーブル: 決まった値の変換(媒体名、商品コードなど)
- 正規表現テーブル: パターンマッチング(URLパス、動的な値)
ルックアップテーブル変数は、データの可読性を高め、レポート分析を効率化する便利な機能です。
変数のネスト(入れ子)活用
変数内で別の変数を参照することで、複雑なデータ処理を実現できます。
変数のネスト活用方法を解説します。
GTMでは、変数の中で{{別の変数名}}という形式で他の変数を参照できます。この機能を「変数のネスト」と呼び、複数の変数を組み合わせた高度な処理が可能になります。
変数内で別の変数を参照
例1: URLとパラメータを組み合わせた完全なトラッキングURL
カスタムJavaScript変数:
function() {
var baseUrl = {{Page URL}};
var campaign = {{URL - utm_campaign}};
return baseUrl + '?tracked_campaign=' + campaign;
}
この変数では、{{Page URL}}と{{URL - utm_campaign}}という2つの変数を参照し、新しい値を生成しています。
複雑なデータ処理の実現
例2: 条件に応じた動的な値の返却
カスタムJavaScript変数:
function() {
var pageType = {{RegEx - ページタイプ}};
var userSegment = {{DL - ユーザーセグメント}};
if (pageType === '商品ページ' && userSegment === 'premium') {
return 'プレミアム会員_商品閲覧';
} else if (pageType === 'カートページ') {
return 'カート_' + userSegment;
} else {
return 'その他';
}
}
この例では、正規表現テーブル変数とデータレイヤー変数を組み合わせて、ユーザー属性とページタイプに応じた動的なラベルを生成しています。
ネスト使用時の注意点
- 参照する変数が
undefinedの場合を想定したエラーハンドリング - ネストが深すぎると可読性が低下するため、2〜3階層程度に抑える
- プレビューモードで各変数の値を確認しながらデバッグ
変数のネストは強力な機能ですが、複雑になりすぎないよう、適切な粒度で設計することが重要です。
GTM変数に関するよくある質問(FAQ)
組み込み変数とユーザー定義変数の違いは?
組み込み変数はGTMに標準で用意されている変数で、ユーザー定義変数は自分で作成するカスタム変数です。
両者の違いを詳しく解説します。
組み込み変数の特徴
- GTM管理画面でチェックを入れるだけで使える
- ページURLやクリック要素など、基本的なデータがプリセットされている
- コーディング不要で簡単に利用可能
- 初期状態では一部のみが有効化されている
- 全てのGTMコンテナで同じものが利用可能
ユーザー定義変数の特徴
- 自分で変数タイプを選択して作成する必要がある
- データレイヤーの値やJavaScriptの実行結果など、カスタムデータを扱える
- より高度で柔軟なデータ取得が可能
- 変数タイプによってはコーディング知識が必要
- コンテナごとに個別に作成・管理
使い分けの基本ルール
- まず組み込み変数で対応できるか確認
- Page URL、Click Textなど、基本的なデータは組み込み変数で取得可能
- 組み込み変数で不足する場合にユーザー定義変数を作成
- データレイヤーの値が必要な場合
- URLパラメータを抽出したい場合
- JavaScriptで計算や加工が必要な場合
具体例
| 取得したいデータ | 使用する変数 |
|---|---|
| ページのURL | 組み込み変数: Page URL |
| クリックされたボタンのテキスト | 組み込み変数: Click Text |
| データレイヤーの商品価格 | ユーザー定義: データレイヤー変数 |
| UTMパラメータの値 | ユーザー定義: URL変数 |
| スクロール率の計算 | ユーザー定義: カスタムJavaScript |
両者を適切に使い分けることで、効率的かつ柔軟なタグ管理が可能になります。基本は組み込み変数、高度な要件にはユーザー定義変数というアプローチが推奨されます。
変数が正しく動作しない時の確認ポイントは?
変数が期待通りに動作しない場合、プレビューモードとブラウザの開発者ツールを使って段階的にデバッグします。
変数のトラブルシューティング手順を体系的に解説します。
確認ステップ1: プレビューモードで変数値をチェック
- プレビューモードを起動
- 該当のイベントを選択
- Variablesタブで変数の値を確認
確認ポイント:
- 変数が一覧に表示されているか
- 値が
undefinedになっていないか - 期待した値と実際の値が一致しているか
確認ステップ2: データレイヤーの確認(データレイヤー変数の場合)
- ブラウザの開発者ツールでConsoleを開く
dataLayerと入力してEnter- データレイヤーの構造と値を確認
確認ポイント:
- データレイヤー自体が存在するか
- 指定したキーのデータが含まれているか
- データ型(文字列、数値、配列など)が正しいか
確認ステップ3: タイミングの問題を確認
| 問題 | 原因 | 解決策 |
|---|---|---|
| 値が取得できない | GTMの実行がデータレイヤーのpushより早い | カスタムイベントトリガーを使用 |
| 古い値が取得される | データレイヤーバージョンの設定ミス | バージョン2を選択 |
| ページ遷移後に値が消える | SPAでの実装不備 | 履歴の変更イベントを使用 |
確認ステップ4: 変数設定の見直し
よくある設定ミス:
- データレイヤーキーのスペルミス
- 大文字小文字の区別ミス
- 配列のインデックス番号の誤り(0始まりに注意)
- 正規表現のエスケープ漏れ
確認ステップ5: トリガーの発火タイミング
変数が存在するタイミングでトリガーが発火しているか確認:
- ページビュートリガーの場合: 「DOM Ready」または「ウィンドウの読み込み」
- クリックトリガーの場合: クリック前に変数が準備されているか
- カスタムイベントの場合: イベントのpushタイミング
この手順に沿って確認することで、ほとんどの変数の問題を解決できます。それでも解決しない場合は、GTMコミュニティフォーラムで質問することをお勧めします。
データレイヤー変数はいつ使うべき?
データレイヤー変数は、ページ上の標準的なデータでは取得できないビジネス固有の情報を計測したい場合に使用します。
データレイヤー変数の使用タイミングと判断基準を解説します。
データレイヤー変数が必要なケース
- eコマース情報
- 商品名、価格、SKU、カテゴリ
- トランザクションID、購入金額
- 在庫状況、割引率
これらの情報はHTMLから直接取得するのが困難なため、データレイヤーを使います。
- ユーザー属性
- 会員ステータス(一般/プレミアム)
- ログイン状態
- ユーザーセグメント
プライバシーに配慮しながら、マーケティングに必要な属性を計測できます。
- コンテンツ情報
- 記事カテゴリ、タグ
- 著者名
- 公開日時
CMSから動的に生成される情報を取得する際に便利です。
組み込み変数で十分なケース
以下の場合はデータレイヤー変数は不要です。
- ページURLやパスの取得 →
Page URL、Page Path - クリック要素の特定 →
Click Text、Click Classes - 参照元の確認 →
Referrer - URLパラメータ → URL変数(ユーザー定義)
判断フローチャート
必要なデータがHTMLやURLから直接取得できる
↓ YES
組み込み変数またはURL変数を使用
↓ NO
ビジネス固有のデータである
↓ YES
データレイヤー変数を使用(開発者に実装依頼)
データレイヤー実装を依頼する際の注意点
開発者に依頼する際は以下を明確に伝えましょう。
- どのページで必要か
- どのタイミングでデータをpushするか
- データの形式(文字列、数値、配列など)
- サンプルコード
データレイヤー変数は強力ですが、実装コストがかかります。本当に必要か、他の方法で代替できないかを慎重に検討してから使用しましょう。
カスタムJavaScript変数の制限事項は?
カスタムJavaScript変数には、セキュリティ上の制約やパフォーマンスへの影響など、いくつかの制限事項があります。
カスタムJavaScript変数を使用する際の制限と注意点を解説します。
セキュリティ上の制限
- 外部リソースへのアクセス制限
- AJAX通信は基本的に避けるべき
- 外部APIの呼び出しは推奨されない
- クロスオリジンの制約を受ける
- 実行できないコード
eval()関数の使用は避けるdocument.write()は使用不可- ページの内容を大幅に変更するコードは不適切
パフォーマンスへの影響
カスタムJavaScript変数は実行時にコードを評価するため、以下の影響があります。
| 処理内容 | 影響度 | 推奨 |
|---|---|---|
| 簡単な文字列操作 | 小 | OK |
| DOM要素の検索 | 中 | 最小限に |
| 複雑なループ処理 | 大 | 避ける |
| 外部API呼び出し | 大 | 非推奨 |
機能的な制限
- 非同期処理への対応
- カスタムJavaScript変数は同期的に実行される
Promiseやasync/awaitを使った非同期処理は正しく動作しない- 結果をすぐに返す必要がある
- スコープの制限
- 関数スコープ内でのみ変数が有効
- グローバル変数への依存は避けるべき
エラーハンドリングの重要性
カスタムJavaScriptでエラーが発生すると、変数はundefinedを返します。
推奨されるエラーハンドリング:
function() {
try {
// メインの処理
var result = document.querySelector('.price').textContent;
return result;
} catch(e) {
// エラー時のデフォルト値
return 'not-available';
}
}
ベストプラクティス
- シンプルな処理に限定する
- エラーハンドリングを必ず実装
- パフォーマンスを考慮し、重い処理は避ける
- 可能な限り標準の変数タイプを使用
カスタムJavaScript変数は便利ですが、これらの制限を理解した上で、適切に使用することが重要です。
変数の数に制限はある?
GTMコンテナに設定できる変数の数に明確な上限はありませんが、実用上は管理性とパフォーマンスを考慮して適切な数に抑えるべきです。
変数の数に関する実践的なガイドラインを解説します。
技術的な制限
Googleの公式ドキュメントによると、GTMコンテナには以下の制限があります。
- 変数の数: 明示的な上限なし
- コンテナ全体のサイズ: 200KBまで(2025年時点)
実際には数百の変数を作成しても技術的には問題ありませんが、管理とパフォーマンスの観点から制限することが推奨されます。
推奨される変数数の目安
| コンテナ規模 | 推奨変数数 | 用途 |
|---|---|---|
| 小規模サイト | 10〜30個 | 基本的な計測 |
| 中規模サイト | 30〜80個 | eコマース、マーケティング計測 |
| 大規模サイト | 80〜150個 | 複雑な計測要件 |
変数が多すぎる場合の問題点
- 管理の複雑化
- どの変数が何に使われているか分からなくなる
- 命名の重複や不整合が発生
- トラブルシューティングが困難になる
- パフォーマンスへの影響
- コンテナサイズの増加
- 特にカスタムJavaScript変数が多いと処理時間が増加
- ページ読み込み速度への悪影響
- メンテナンスコスト
- 変更時の影響範囲の把握が困難
- 不要な変数の特定に時間がかかる
変数の整理方法
定期的に以下のメンテナンスを実施しましょう。
- 使用状況の確認
- タグやトリガーから参照されていない変数を特定
- 過去6ヶ月使われていない変数は削除候補
- 統合可能な変数の検討
- 似た機能の変数を一つに統合
- 正規表現テーブルやルックアップテーブルで複数の変数を集約
- フォルダによる整理
- 用途別にフォルダ分け
- 「テスト用」フォルダで検証後、本番に移行または削除
コンテナサイズの確認方法
GTM管理画面で「バージョン」→「最新バージョン」→「ダウンロード」すると、JSONファイルとしてコンテナをダウンロードでき、ファイルサイズで容量を確認できます。
変数の数よりも、「本当に必要な変数だけを維持する」という意識が重要です。定期的な棚卸しで、整理されたコンテナを保ちましょう。
まとめ
GTMの変数を正しく理解し活用することで、効率的なタグ管理と精度の高いデータ計測が実現します。
本記事で解説した重要ポイントを振り返りましょう。
GTM変数の重要ポイント
- 変数の基本理解
- 変数は「タグ」「トリガー」と並ぶGTMの3大要素
- 動的なデータを取得・格納する「入れ物」の役割
- 組み込み変数とユーザー定義変数の2種類がある
- 組み込み変数の活用
- まずは組み込み変数の有効化から始める
- Page URL、Click Textなど基本的なデータはこれで対応
- トリガー条件として使うことで柔軟なタグ制御が可能
- ユーザー定義変数の作成
- データレイヤー変数でビジネスデータを取得
- カスタムJavaScriptで高度な処理を実現
- URL変数でパラメータを抽出
- デバッグとテスト
- プレビューモードで必ず動作確認
- ブラウザの開発者ツールでデータレイヤーをチェック
- Googleタグアシスタントで詳細な検証
学んだ内容の実践ステップ
ステップ1(初心者): 組み込み変数を有効化し、基本的なページビュー計測を設定
ステップ2(中級者): データレイヤー変数を使ってeコマース計測を実装
ステップ3(上級者): カスタムJavaScript変数や正規表現テーブルで高度な計測を実現
次に学ぶべき関連トピック
- タグの設定: 変数を実際のタグ(GA4、Google広告など)で活用する方法
- トリガーの詳細設定: 変数を使った複雑な発火条件の作成
- データレイヤーの実装: 開発者と連携してデータレイヤーを設計・実装
- GTMのバージョン管理: 変更履歴の管理と本番環境への公開フロー
困った時の公式ドキュメント
GTM変数をマスターすることで、マーケティング計測の精度が格段に向上し、データドリブンな意思決定が可能になります。まずは組み込み変数から始めて、徐々にユーザー定義変数にチャレンジしていきましょう。