Googleタグマネージャー(GTM)の複数設置は可能?設定方法と注意点を完全解説
「Webサイトに複数のGoogleタグマネージャー(GTM)を設置したいけど、可能なのか?」「すでに設置されているGTMがあるのに、外部パートナーから別のGTMの設置を求められて困っている」——そんな疑問や悩みを抱えていませんか?
結論から言うと、GTMの複数設置は技術的に可能ですが、慎重な判断が必要です。 設置方法を誤るとサイトの表示速度が低下したり、計測データに問題が生じる可能性があります。
この記事では、GTM複数設置の正しい方法から、発生しうる問題への対処法、さらには複数設置を避けるための代替案まで、実務で使える情報を網羅的に解説します。初めてGTMを扱う方でも理解できるよう、具体的なコード例やステップバイステップの手順を交えてお伝えしますので、ぜひ最後までお読みください。
目次
Googleタグマネージャー(GTM)を複数設置できるのか?
結論:技術的には可能だが推奨されないケースが多い
Googleタグマネージャー(GTM)の複数設置は技術的に可能です。 同一ページに複数のGTMコンテナを設置することは、Googleの公式ドキュメントでも認められている方法であり、実際に多くのWebサイトで実装されています。
しかし、複数設置には以下のようなリスクが伴うため、原則として単一のGTMコンテナでの運用が推奨されています:
- パフォーマンスの低下: 複数のGTMスクリプトを読み込むことでページ表示速度が遅くなる
- dataLayerの競合: 複数のコンテナ間でデータの上書きや干渉が発生する可能性
- 管理の複雑化: どのコンテナに何のタグが設置されているか把握しづらくなる
- デバッグの困難さ: トラブル発生時の原因特定に時間がかかる
GTMはそもそも複数のタグを一元管理するためのツールです。複数のGTMを設置すること自体が、この本来の目的と矛盾する可能性があります。そのため、複数設置を検討する前に、本当に必要なのかを慎重に判断することが重要です。
GTM複数設置が必要になる3つのシチュエーション
GTMの複数設置が必要、または有効なケースは主に以下の3つです:
ケース1: 複数サイトを運営している場合
企業サイトとECサイト、コーポレートサイトとサービスサイトなど、完全に異なるドメインやサブドメインで複数のWebサイトを運営している場合、各サイトごとに別々のGTMコンテナを設置するのが一般的です。これは「複数設置」というよりも、それぞれのサイトに1つずつGTMを設置する正常な使い方です。
ケース2: 部門やチーム別で管理を分けたい場合
大規模な組織では、マーケティング部門とIT部門、あるいは事業部ごとに計測要件が異なるケースがあります。この場合、管理権限を完全に分離したいというニーズから、複数のGTMコンテナを同一サイト内に設置することが検討されます。ただし、後述するワークスペース機能やゾーン機能を活用すれば、単一コンテナでも同様の管理が可能です。
ケース3: 開発環境と本番環境を分けたい場合
開発環境・ステージング環境・本番環境でそれぞれ異なるGoogleアナリティクスやその他の計測ツールに接続したい場合、環境ごとに別のGTMコンテナを使用するケースがあります。ただし、これも変数を活用することで単一コンテナでの運用が可能です。
【パターン別】GTM複数設置の正しい方法
パターン1:異なるサイトごとに別々のGTMコンテナを設置する方法
異なるWebサイトやドメインを運営している場合、各サイトごとに新しいGTMコンテナを作成して設置します。 これは最もシンプルで推奨される方法です。
ステップ1: 新しいコンテナの作成
- Googleタグマネージャーにログインし、画面右上の「アカウントを作成」または既存アカウント内で「コンテナを作成」をクリック
- コンテナ名(例:「ECサイト用」「ブログ用」)を入力
- ターゲットプラットフォームで「ウェブ」を選択
- 「作成」ボタンをクリック
ステップ2: コンテナIDとスニペットの取得
作成が完了すると、GTM-XXXXXXXという形式のコンテナIDとインストール用のスニペットコードが表示されます。このコードは2つの部分から構成されています。
ステップ3: 各サイトへのタグ設置
取得したスニペットコードを、対象となるWebサイトの以下の位置に設置します:
- 1つ目のコード:
<head>タグの直後に設置 - 2つ目のコード:
<body>タグの直後に設置
<!DOCTYPE html>
<html>
<head>
<!-- Google Tag Manager -->
<script>(function(w,d,s,l,i){w[l]=w[l]||[];w[l].push({'gtm.start':
new Date().getTime(),event:'gtm.js'});var f=d.getElementsByTagName(s)[0],
j=d.createElement(s),dl=l!='dataLayer'?'&l='+l:'';j.async=true;j.src=
'https://www.googletagmanager.com/gtm.js?id='+i+dl;f.parentNode.insertBefore(j,f);
})(window,document,'script','dataLayer','GTM-XXXXXXX');</script>
<!-- End Google Tag Manager -->
</head>
<body>
<!-- Google Tag Manager (noscript) -->
<noscript><iframe src="https://www.googletagmanager.com/ns.html?id=GTM-XXXXXXX"
height="0" width="0" style="display:none;visibility:hidden"></iframe></noscript>
<!-- End Google Tag Manager (noscript) -->
</body>
</html>
異なるサイトであれば、それぞれに独立したGTMコンテナを設置することで、管理がシンプルになり、相互干渉のリスクもありません。
パターン2:同一サイト内に複数のGTMコンテナを設置する方法
同一サイト内に複数のGTMコンテナを設置する場合、プライマリコンテナとセカンダリコンテナという2層構造で実装するのが推奨される方法です。
前提: なぜ同一サイトに複数必要なのか
外部のマーケティングパートナーや解析会社が独自のGTMを要求するケース、または部門間で完全に管理を分離したいケースなどが該当します。ただし、この方法は最終手段として検討すべきで、まずはワークスペース機能やゾーン機能での解決を試みてください。
推奨手法: プライマリ+セカンダリコンテナの設計
最も安全な方法は、1つのコンテナを通常通り設置(プライマリ)し、2つ目のコンテナをカスタムHTMLタグとして設置(セカンダリ)する方法です。
ステップ1: プライマリコンテナの標準設置
1つ目のGTMコンテナは、通常の方法で<head>と<body>タグに直接設置します。
ステップ2: セカンダリコンテナをカスタムHTMLタグで設置
プライマリGTM内で以下の手順を実行します:
- GTM管理画面で「タグ」→「新規」をクリック
- タグタイプで「カスタムHTML」を選択
- 2つ目のGTMコンテナのスニペットコード全体(headとbodyの両方)を貼り付け
- タグ名を「セカンダリGTM」などわかりやすい名前に設定
<!-- カスタムHTMLタグ内に記述するコード -->
<script>(function(w,d,s,l,i){w[l]=w[l]||[];w[l].push({'gtm.start':
new Date().getTime(),event:'gtm.js'});var f=d.getElementsByTagName(s)[0],
j=d.createElement(s),dl=l!='dataLayer'?'&l='+l:'';j.async=true;j.src=
'https://www.googletagmanager.com/gtm.js?id='+i+dl;f.parentNode.insertBefore(j,f);
})(window,document,'script','dataLayer','GTM-YYYYYYY');</script>
<noscript><iframe src="https://www.googletagmanager.com/ns.html?id=GTM-YYYYYYY"
height="0" width="0" style="display:none;visibility:hidden"></iframe></noscript>
ステップ3: トリガー設定による条件分岐
セカンダリGTMを特定のページやディレクトリでのみ動作させたい場合、トリガーを設定します:
- 「トリガー」セクションで新規トリガーを作成
- トリガータイプで「ページビュー」を選択
- 「一部のページビュー」を選択し、条件を設定(例: Page Path に /product/ を含む)
- 作成したカスタムHTMLタグにこのトリガーを紐付け
この方法により、セカンダリGTMの読み込みタイミングを制御し、プライマリGTMとの競合リスクを最小化できます。
パターン3:GTMのゾーン機能を活用する方法(推奨)
GTM 360(有料版)のゾーン機能を使えば、複数コンテナを設置せずに、単一コンテナ内で領域を分割管理できます。 これは複数設置の代替案として最も推奨される方法です。
ゾーン機能とは何か
ゾーンは、GTMコンテナ内に制限されたスペースを作成し、特定のユーザーやチームがその範囲内でのみタグを管理できるようにする機能です。これにより、外部パートナーに一部の権限を委譲しながらも、コア部分の設定を保護できます。
複数コンテナの代替案としてのゾーン活用
ゾーン機能を使用すると以下のメリットがあります:
- パフォーマンスへの影響を最小化(単一コンテナのため)
- dataLayerの一元管理が可能
- デバッグが容易
- 権限管理が柔軟
設定手順と使い分けのポイント
- GTM管理画面で「管理」→「ゾーン」を選択
- 新しいゾーンを作成し、名前と制限ルールを設定
- 外部パートナーにゾーン権限を付与
- パートナーはゾーン内でのみタグを追加・編集可能
ゾーン機能はGTM 360の有料機能ですが、複数コンテナ運用のリスクを考えると、コストに見合う価値があります。 無料版を使用している場合は、ワークスペース機能と権限設定を組み合わせることで、ある程度の管理分離が可能です。
GTM複数設置時に発生する問題とリスク
パフォーマンスへの影響
複数のGTMコンテナを設置すると、各コンテナのJavaScriptファイルを個別に読み込むため、ページの表示速度が低下します。 これはユーザー体験とSEOの両方に悪影響を及ぼす可能性があります。
ページ読み込み速度の低下
1つのGTMコンテナは通常、15〜30KBのJavaScriptファイルを読み込みます。2つのコンテナを設置すると、単純計算で2倍のデータ量になり、特にモバイル環境では顕著な遅延が発生する可能性があります。
スクリプトの重複実行による遅延
複数のGTMコンテナがそれぞれ独立して動作するため、以下のような問題が発生します:
- 同じdataLayerイベントを複数回処理する
- 類似したタグ(例:複数のGoogleアナリティクスタグ)が重複して発火する
- ブラウザのメインスレッドが長時間占有される
具体的な影響の目安
一般的に、GTMコンテナを1つ追加するごとに、ページ読み込み時間が50〜200ミリ秒増加すると言われています。これはページ全体のパフォーマンススコアに影響し、特にCore Web Vitalsの指標であるLCP(Largest Contentful Paint)やFID(First Input Delay)に悪影響を与える可能性があります。
PageSpeed InsightsやLighthouseでパフォーマンスを定期的に計測し、複数GTM設置による影響を監視することが重要です。
dataLayerの競合問題
dataLayerは GTMとWebサイト間でデータをやり取りするための重要な仕組みですが、複数のGTMコンテナが同じdataLayerを共有すると競合が発生する可能性があります。
dataLayerとは何か(初心者向け簡単説明)
dataLayerは、Webサイト上で発生するイベントやユーザー情報を格納する JavaScript配列です。例えば、「商品がカートに追加された」「購入が完了した」といった情報を一時的に保存し、GTMがその情報を読み取ってタグに渡します。
具体的には、以下のようなコードでdataLayerにデータを格納します:
dataLayer.push({
'event': 'purchase',
'transactionId': '12345',
'transactionTotal': 99.99
});
複数GTMによる変数の上書きリスク
複数のGTMコンテナが同じdataLayerを参照している場合、以下のような問題が発生します:
- 値の上書き: 1つ目のコンテナが設定した変数を、2つ目のコンテナが意図せず上書きしてしまう
- イベントの重複処理: 同じdataLayerイベントを複数のコンテナが処理し、タグが重複して発火する
- タイミングの問題: どちらのコンテナが先に処理されるかが不定で、期待通りの動作をしない
競合が発生した際の症状
- Googleアナリティクスで同じイベントが複数回計測される
- コンバージョンが実際の数値より多くカウントされる
- カスタムディメンションの値が期待と異なる
- 特定のタグが発火しない、または遅延して発火する
複数コンテナを設置する場合は、それぞれのコンテナで使用する変数名やイベント名を明確に分離し、相互に干渉しないよう設計することが不可欠です。
デバッグとトラブルシューティングの複雑化
複数のGTMコンテナが存在すると、問題発生時の原因特定が非常に困難になります。 「どのコンテナのどのタグが原因なのか」を突き止めるのに時間がかかり、ビジネスに影響を与える可能性があります。
プレビューモードでの確認方法
GTMには「プレビューモード」という機能があり、タグの発火状況をリアルタイムで確認できます。しかし、複数コンテナの場合、以下の手順が必要です:
- 1つ目のコンテナでプレビューモードを有効化
- 同じブラウザで2つ目のコンテナのプレビューモードも有効化
- 両方のプレビューウィンドウを同時に監視
この方法は煩雑で、どちらのコンテナで何が起こっているのかを把握するのが難しくなります。
どちらのコンテナで発火したか判別する方法
ブラウザの開発者ツールを使用して判別できます:
- ブラウザでF12キーを押して開発者ツールを開く
- 「Network」タブを選択
- フィルターに「gtm.js」と入力
- ページを読み込み、複数のgtm.jsリクエストを確認
- 各リクエストのURLに含まれるコンテナID(GTM-XXXXXXX)を確認
また、Console タブでdataLayerと入力してEnterキーを押すと、dataLayerの内容全体を確認でき、どのコンテナが どの情報を処理しているかを追跡できます。
トラブルを未然に防ぐには、可能な限り単一コンテナでの運用を目指し、やむを得ず複数設置する場合は、各コンテナの役割と管理者を明確に文書化しておくことが重要です。
GTM複数設置時のトラブルシューティング
よくあるエラーと解決方法
エラー1: タグが二重に発火してしまう
原因: 最も多いのは、複数のGTMコンテナで同じタグ(例:Googleアナリティクスのページビュータグ)が設定されており、両方から同時に発火しているケースです。または、カスタムHTMLタグ内に設置したセカンダリGTMのトリガー設定が広すぎる場合も該当します。
対処法:
- 各GTMコンテナの管理画面で、どのタグが設定されているかを確認
- 重複しているタグを特定し、一方のコンテナから削除または無効化
- セカンダリGTMをカスタムHTMLで設置している場合は、トリガー条件を見直し、必要最小限のページでのみ発火するよう制限
- プレビューモードで動作を確認し、タグが1回のみ発火することを検証
エラー2: dataLayerの値が取得できない
原因: 複数のGTMコンテナが異なるタイミングでdataLayerを読み込もうとしており、タイミングのずれによって値が取得できない場合があります。または、一方のコンテナがdataLayerの変数を上書きしている可能性もあります。
対処法:
- ブラウザのコンソールで
dataLayerの内容を直接確認 - GTMのプレビューモードで「Variables」タブを確認し、期待する値が格納されているかチェック
- タグの発火タイミングを調整(例:「DOM Ready」から「Window Loaded」に変更)
- 各GTMコンテナで使用する変数名に接頭辞を付けて区別(例:
gtm1_userId、gtm2_userId)
エラー3: ページ表示速度が極端に遅くなった
原因: 複数のGTMコンテナがそれぞれ多数のタグを読み込んでおり、リソースの読み込みがボトルネックになっています。特に、各GTMコンテナ内でサードパーティのスクリプト(広告タグ、ヒートマップツールなど)が設定されている場合、その影響が累積されます。
対処法:
- PageSpeed InsightsやLighthouseでパフォーマンスを測定し、どのリソースが遅延の原因かを特定
- 不要なタグを削除または無効化
- タグの読み込みを遅延させる(例:「Window Loaded」トリガーを使用)
- 可能であれば、サードパーティタグを統合し、1つのGTMコンテナに集約
- 最終手段として、複数GTMコンテナの使用を中止し、単一コンテナ+ワークスペース管理に移行
プレビューモードでの動作確認手順
GTMのプレビューモードは、タグが正しく動作しているかを本番環境に影響を与えずに確認できる重要な機能です。 複数のGTMコンテナを使用している場合、より慎重な確認が必要です。
各コンテナの動作確認方法
- 1つ目のGTMコンテナでプレビューを開始
- GTM管理画面右上の「プレビュー」ボタンをクリック
- 対象のWebサイトURLを入力して「Connect」をクリック
- 新しいタブでWebサイトが開き、下部にTag Assistantパネルが表示される
- 2つ目のGTMコンテナでも同様にプレビューを開始
- 同じブラウザの別タブでもう一方のGTMコンテナにアクセス
- 同様に「プレビュー」ボタンをクリック
- 同じWebサイトURLを指定(すでに開いているタブがあれば自動的に接続される)
- 両方のTag Assistantパネルで発火状況を確認
- Summary:ページロード時に発火したタグの一覧
- Tags Fired:実際に発火したタグ
- Tags Not Fired:条件を満たさず発火しなかったタグ
Tag Assistantの活用法
Tag Assistantでは、各タグの詳細情報を確認できます:
- タグ名:どのタグが発火したか
- 発火トリガー:どの条件で発火したか
- データレイヤー:どの情報を使用したか
- エラー:問題が発生していないか
複数のコンテナを使用している場合、それぞれのTag Assistantパネルで同じイベントを確認し、意図しない重複発火がないかをチェックします。
デバッグコンソールでのチェックポイント
ブラウザの開発者ツール(F12キー)を併用すると、より詳細な情報を得られます:
- Consoleタブで確認すべきこと
- GTM関連のエラーメッセージ
dataLayerの内容(dataLayerと入力してEnter)- タグの発火ログ
- Networkタブで確認すべきこと
- GTMのスクリプト読み込み状況(
gtm.jsでフィルタ) - 各コンテナの読み込み時間
- サードパーティタグのリクエスト状況
- GTMのスクリプト読み込み状況(
- Performance タブで確認すべきこと
- GTMによるスクリプト実行時間
- メインスレッドのブロッキング状況
プレビューモードでの確認を習慣化し、本番環境に公開する前に必ず動作検証を行うことで、トラブルを未然に防げます。
GTM複数設置の代替案と最適解
単一コンテナ+ワークスペース管理(推奨)
GTMのワークスペース機能を活用すれば、複数のコンテナを設置せずに、チームやプロジェクトごとに作業領域を分けて管理できます。 これは複数設置を避けるための最も実用的な代替案です。
ワークスペース機能の活用
ワークスペースとは、GTMコンテナ内に作成できる独立した作業スペースのことです。各ワークスペースで別々にタグを編集でき、準備ができたら本番環境にマージ(統合)できます。
主な特徴:
- 1つのコンテナ内に複数のワークスペースを作成可能(無料版は最大3つまで)
- 各ワークスペースで独立してタグ・トリガー・変数を編集できる
- 変更内容は公開するまで本番環境に影響しない
- ワークスペース間で変更内容をマージできる
チーム別・プロジェクト別の管理方法
実際の運用例:
- マーケティングチーム用ワークスペース: 広告タグや計測タグを管理
- IT部門用ワークスペース: 技術的な実装やGA4の詳細設定を管理
- 外部パートナー用ワークスペース: 特定のキャンペーン用タグを管理
各チームは自分のワークスペース内で自由に作業でき、お互いの作業を妨げることなく、最終的に統合できます。
権限設定による役割分担
GTMでは、ユーザーごとに以下の権限レベルを設定できます:
| 権限レベル | できること |
|---|---|
| 閲覧権限 | コンテナの設定を見ることのみ可能 |
| 編集権限 | タグ・トリガー・変数の追加・編集が可能(公開は不可) |
| 承認権限 | 編集権限に加え、バージョンの承認が可能(公開は不可) |
| 公開権限 | すべての操作が可能(コンテナの公開も可能) |
この権限設定を活用すれば、外部パートナーには編集権限のみを付与し、社内の責任者が最終的な公開を管理するという運用が可能です。
ワークスペースと権限設定を組み合わせることで、複数のGTMコンテナを設置することなく、効率的かつ安全な管理体制を構築できます。
GTMアカウントとコンテナの階層構造を理解する
GTMの階層構造を正しく理解することで、無駄な複数コンテナ設置を避け、適切な管理体制を構築できます。
アカウント・コンテナ・タグの関係性
GTMは以下の3層構造で管理されています:
アカウント(Account)
├── コンテナ1(Container - Website A)
│ ├── ワークスペース1
│ ├── ワークスペース2
│ └── タグ・トリガー・変数
├── コンテナ2(Container - Website B)
│ └── タグ・トリガー・変数
└── コンテナ3(Container - Mobile App)
└── タグ・トリガー・変数
各階層の役割:
- アカウント: 組織全体を表す最上位の単位。通常、1企業につき1アカウント
- コンテナ: Webサイトやアプリごとに作成する管理単位。1つのWebサイトには通常1つのコンテナ
- ワークスペース: コンテナ内の作業スペース。チームやプロジェクトごとに分割可能
- タグ・トリガー・変数: 実際の計測やマーケティング設定
適切な構造設計のベストプラクティス
✓ 推奨される構造:
- 企業全体で1つのアカウント
- Webサイトごとに1つのコンテナ
- 同一サイト内では単一コンテナ+複数ワークスペースで管理
- 権限設定で役割を分担
✗ 避けるべき構造:
- 部門ごとに別々のアカウントを作成(管理が分散し非効率)
- 同一サイトに複数のコンテナを設置(パフォーマンス低下とデバッグ困難)
- コンテナの命名規則が不明確(管理の混乱)
実務での運用例:
株式会社Aの場合:
- アカウント名: 株式会社A
- コンテナ1: コーポレートサイト(GTM-CORP01)
- コンテナ2: ECサイト(GTM-EC01)
- コンテナ3: 採用サイト(GTM-RECRUIT01)
各コンテナ内で、マーケティングチーム用・IT部門用のワークスペースを作成し、権限を分けて運用します。
階層構造を正しく設計することで、スケーラブルで管理しやすいGTM運用が実現できます。
サーバーサイドGTMの活用
サーバーサイドGTM(Server-side Tagging)は、クライアントサイド(ブラウザ)ではなくサーバー上でタグを処理する仕組みです。 これにより、複数設置に伴う問題の一部を解決できます。
サーバーサイドGTMとは
従来のGTM(クライアントサイドGTM)は、ユーザーのブラウザ上でJavaScriptを実行してタグを処理します。一方、サーバーサイドGTMは、自社のサーバーまたはGoogle Cloud Platform上でタグ処理を行います。
主な特徴:
- ブラウザの負荷を軽減し、ページ速度が向上
- サードパーティへのデータ送信を制御できる
- Cookie制限の影響を受けにくい
- より正確なデータ収集が可能
クライアントサイドとの使い分け
| 項目 | クライアントサイドGTM | サーバーサイドGTM |
|---|---|---|
| 実行場所 | ユーザーのブラウザ | サーバー |
| ページ速度への影響 | 大きい | 小さい |
| 設定の難易度 | 簡単 | やや複雑 |
| コスト | 無料 | サーバー費用が発生 |
| プライバシー制御 | 限定的 | 高度な制御が可能 |
複数設置問題の解決につながるケース
サーバーサイドGTMが複数コンテナ設置の代替案として有効なケース:
- パフォーマンス改善が目的の場合
- 複数のクライアントサイドGTMによるブラウザ負荷を、1つのサーバーサイドGTMに集約
- ページ速度を維持しながら、多数のタグを管理可能
- プライバシー要件が厳しい場合
- 複数のサードパーティに直接データを送信するのではなく、サーバーで一旦処理
- 必要最小限のデータのみを各サービスに送信
- 正確な計測が求められる場合
- 広告ブロッカーやITP(Intelligent Tracking Prevention)の影響を受けにくい
- 複数の計測ツールに対して一貫したデータを送信できる
サーバーサイドGTMは初期設定に技術的な知識が必要ですが、大規模なサイトや高度な計測要件がある場合、複数クライアントサイドGTMの代替案として非常に有効です。
【実例】GTM複数設置のユースケースと設定例
ケーススタディ1:ECサイトとブログを運営している場合
同一企業が異なるドメインまたはサブドメインでECサイトとブログを運営している場合、それぞれに別のGTMコンテナを設置するのが一般的です。
具体的な設定内容
ECサイト(shop.example.com)の構成:
- コンテナ名: ECサイト用GTM
- コンテナID: GTM-EC12345
- 管理するタグ:
- Google Analytics 4(eコマース設定)
- Google広告のコンバージョントラッキング
- Facebook Pixel(商品購入イベント)
- カートに追加イベント
- 購入完了イベント
ブログ(blog.example.com)の構成:
- コンテナ名: ブログ用GTM
- コンテナID: GTM-BLOG67890
- 管理するタグ:
- Google Analytics 4(コンテンツ分析用)
- 記事閲覧時間の計測
- SNSシェアボタンのクリック計測
- メルマガ登録フォームの送信イベント
それぞれのコンテナで管理するタグの種類
| タグの種類 | ECサイト | ブログ | 理由 |
|---|---|---|---|
| GA4基本設定 | ○ | ○ | 両方で必要だが、設定内容が異なる |
| eコマース計測 | ○ | × | ECサイトのみ |
| 広告タグ | ○ | △ | ECは購入CV、ブログはリード獲得CV |
| コンテンツ計測 | × | ○ | ブログのみ |
| フォーム送信 | ○(問い合わせ) | ○(メルマガ) | 目的が異なる |
このように、サイトの性質と目的が明確に異なる場合、別々のGTMコンテナで管理することで、設定がシンプルになり、トラブルシューティングも容易になります。
ケーススタディ2:マーケティングチームとIT部門で管理を分ける場合
大規模な組織では、マーケティングチームとIT部門でGTMの管理責任を分けたいニーズがあります。 この場合、複数コンテナではなくワークスペース機能を活用するのが推奨されます。
権限設定のポイント
マーケティングチーム:
- 権限レベル: 編集権限または承認権限
- 管理範囲: 広告タグ、キャンペーン計測、A/Bテストツール
- ワークスペース: Marketing Workspace
- できること: タグの追加・編集・プレビュー
- できないこと: 本番環境への公開
IT部門:
- 権限レベル: 公開権限(管理者)
- 管理範囲: GA4の基本設定、サイト全体の技術的な計測
- ワークスペース: Default Workspace
- できること: すべての操作(最終的な公開権限を保持)
コンテナ分割 vs ワークスペース活用の判断基準
以下の表で、どちらの方法が適しているか判断できます:
| 状況 | 推奨方法 | 理由 |
|---|---|---|
| 同じWebサイトの管理権限を分けたい | ワークスペース | 単一コンテナで権限管理が可能 |
| 完全に独立した意思決定が必要 | ワークスペース | 最終公開権限をIT部門が保持すべき |
| 外部パートナーに一部を委託 | ワークスペース+ゾーン | セキュリティを確保しつつ柔軟な管理が可能 |
| 異なるドメインのサイト | コンテナ分割 | 物理的に分離されているため |
| パフォーマンスが最重要 | ワークスペース | 単一コンテナの方が高速 |
実際の運用フロー:
- マーケティングチームが自分のワークスペースで新しい広告タグを追加
- プレビューモードでテスト
- IT部門に公開を依頼(または承認を依頼)
- IT部門が最終確認後、本番環境に公開
- 問題があれば、以前のバージョンに戻す
この方法により、マーケティングチームの自律性を保ちつつ、IT部門が最終的な品質管理を行うという、バランスの取れた運用が実現できます。
ケーススタディ3:外部パートナーに一部の計測を委託する場合
広告代理店や解析会社など、外部パートナーにタグ管理の一部を委託するケースでは、セキュリティと管理の両立が重要です。
セキュリティ面での考慮事項
外部パートナーにGTMへのアクセス権を付与する際の注意点:
- 最小権限の原則
- 必要な権限のみを付与(通常は編集権限まで)
- 公開権限は原則として社内のみ
- アクセス範囲の制限
- 可能であればゾーン機能で作業範囲を限定
- 重要な設定(GA4のプロパティID、コアな計測設定)は編集不可に
- 監査とログの確認
- GTMのバージョン履歴で、誰が何を変更したかを定期的に確認
- 意図しない変更があればすぐに対応
- 契約終了時の対応
- パートナーとの契約終了時は即座にアクセス権を削除
- パートナーが設定したタグを確認・整理
ゾーン機能の活用例
GTM 360(有料版)のゾーン機能を使用した設定例:
シナリオ: 広告代理店Aに、特定のキャンペーン用タグの管理を委託
ゾーンの設定:
- ゾーン名: 代理店A専用ゾーン
- 境界条件: Page Pathが
/campaign2024/で始まるページのみ - 許可されるタグタイプ: カスタムHTML、Google広告タグのみ
- 禁止事項: GA4の基本設定の編集、グローバル変数の変更
運用の流れ:
- 代理店Aのスタッフにゾーン限定のアクセス権を付与
- 代理店Aはゾーン内でのみタグを追加・編集可能
- ゾーン外の設定(GA4の基本設定など)は閲覧のみ可能で、編集不可
- 社内のGTM管理者が最終的な公開を実行
ゾーン機能が使えない場合の代替案:
無料版のGTMでは、以下の方法で類似の管理を実現できます:
- 専用ワークスペースの作成: 外部パートナー専用のワークスペースを作成
- 命名規則の徹底: パートナーが作成するタグには接頭辞を付ける(例:
[Partner-A]) - 定期レビュー: 週次または月次で変更内容を確認
- 公開権限の制限: 外部パートナーには編集権限のみを付与し、社内が公開を管理
外部パートナーとの協業では、信頼関係の構築とともに、適切な技術的制御を設けることで、セキュリティとビジネスの効率性を両立できます。
GTM複数設置に関するよくある質問(FAQ)
Q1. GTMコンテナは何個まで設置できますか?
技術的な制限としては、1つのWebページに設置できるGTMコンテナの数に上限はありません。 理論上は10個でも20個でも設置可能ですが、実用上は推奨されません。
一般的な実務では:
- 異なるサイト: サイトごとに1つのコンテナ(サイト数の制限なし)
- 同一サイト: 原則として1つ、やむを得ない場合でも2〜3個まで
複数設置によるリスク:
- コンテナが増えるほどページ読み込み速度が低下
- 管理が複雑化し、トラブル発生率が上昇
- dataLayerの競合リスクが高まる
実際には、3つ以上のコンテナを同一サイトに設置しているケースは極めて稀で、そのような状況であれば、GTM運用体制の根本的な見直しが必要です。「設置できるか」ではなく「設置すべきか」という観点で判断することが重要です。
Q2. 複数設置するとGoogleアナリティクスの計測に影響はありますか?
はい、複数のGTMコンテナを設置すると、Googleアナリティクスの計測に影響が出る可能性があります。 特に以下のような問題が発生しやすいです。
主な影響:
- ページビューの重複計測
- 複数のコンテナでGA4タグが設定されていると、1回のページ表示が2回以上カウントされる
- セッション数やユーザー数のデータが実際より多く記録される
- イベントの重複
- コンバージョンイベントが複数回発火し、成果が水増しされる
- ROI(投資対効果)の計算が不正確になる
- カスタムディメンションの不整合
- 一方のコンテナで設定した値が、もう一方で上書きされる
- ユーザープロパティが期待と異なる値になる
対策方法:
| 対策 | 具体的な方法 |
|---|---|
| タグの棲み分け | 各コンテナでGAタグを設定するページを明確に分ける |
| 別プロパティの使用 | 各コンテナで異なるGA4プロパティIDを使用する |
| トリガー条件の厳密化 | 各タグが重複して発火しないようトリガーを設定 |
| 定期的な監査 | GA4のレポートで異常な数値がないか定期チェック |
確認方法:
GA4の管理画面で以下をチェックします:
- リアルタイムレポートで、同じイベントが同時に2回記録されていないか確認
- DebugViewで、イベントの発火回数とパラメータを詳細に確認
- プレビューモードで、両方のGTMコンテナの動作を同時に監視
複数コンテナを設置する場合は、GA4の計測設定を慎重に設計し、定期的にデータの整合性を確認することが不可欠です。
Q3. すでに複数設置してしまった場合、統合すべきですか?
多くの場合、長期的には単一コンテナへの統合を検討すべきです。 ただし、統合にはリスクも伴うため、慎重な判断と計画が必要です。
統合を推奨するケース:
- ページ表示速度が明らかに低下している
- タグの管理が煩雑で、どこに何があるか把握できていない
- dataLayerの競合によるデータの不整合が発生している
- 外部パートナーとの契約が終了し、そのコンテナが不要になった
統合のメリット:
- パフォーマンスの改善
- 管理の単純化
- デバッグの容易化
- 運用コストの削減
統合の手順:
- 現状分析(1週間〜1ヶ月)
- 各コンテナに設定されているタグをすべてリストアップ
- 各タグの役割と発火条件を文書化
- 重複しているタグを特定
- 統合計画の策定(1週間)
- 統合先のコンテナを決定(通常は最も古いコンテナ)
- タグのマッピング(どのタグをどう移行するか)
- テスト環境での検証計画
- ステージング環境での実装とテスト(2週間〜1ヶ月)
- 統合先コンテナにすべてのタグを移行
- プレビューモードで動作確認
- 関係者によるユーザー受け入れテスト
- 本番環境への移行(1日)
- 低トラフィックの時間帯に実施
- 不要なコンテナのスニペットをHTMLから削除
- 統合コンテナを公開
- 移行後の監視(1週間〜1ヶ月)
- GA4のデータに異常がないか確認
- ページ速度の改善を測定
- 問題があれば即座にロールバック
統合しない方が良いケース:
- 外部パートナーが独自の契約で管理しており、統合が契約上困難
- 現状で大きな問題が発生しておらず、統合のリスクが利益を上回る
- 近い将来にサイトリニューアルが予定されており、その際に再設計可能
統合は計画的に行えば大きなメリットがありますが、拙速な実行は新たな問題を生みます。専門家のサポートを受けながら、段階的に進めることをお勧めします。
Q4. 開発環境と本番環境で別々のGTMを使うべきですか?
開発環境と本番環境で別々のGTMコンテナを使用することは可能ですが、単一のGTMコンテナで環境を切り替える方法が一般的に推奨されます。
単一コンテナ+変数による環境切り替え(推奨)
最も効率的な方法は、1つのGTMコンテナを使用し、環境に応じてGA4のプロパティIDや広告タグのIDを変数で切り替える方法です。
設定手順:
- ユーザー定義変数の作成
- 変数タイプ: 「ルックアップテーブル」または「正規表現の表」
- 入力変数: {{Page Hostname}}
- 出力: 環境に応じたGA4測定ID
例:
ホスト名が "localhost" → G-DEVELOP123
ホスト名が "dev.example.com" → G-STAGING456
ホスト名が "example.com" → G-PRODUCTION789
- GA4タグの設定
- タグIDに作成した変数を指定
- これにより、同じタグ設定で環境ごとに異なるプロパティに送信される
別々のコンテナを使用する場合の注意点:
どうしても環境ごとに別コンテナを使用する場合:
メリット:
- 環境ごとの設定を完全に分離できる
- 開発環境での実験が本番に影響しない
- 権限管理が明確
デメリット:
- 本番環境への変更反映が手間(両方のコンテナで同じ変更が必要)
- 設定の同期漏れが発生しやすい
- 管理コストが増加
運用方法:
開発用と本番用で別コンテナを使う場合:
- 開発環境: GTM-DEV12345を設置
- 本番環境: GTM-PROD67890を設置
- 同期ルール: 開発環境で検証済みの設定を、週次で本番環境にエクスポート/インポート
結論として、ほとんどのケースでは単一コンテナ+変数による環境切り替えで十分であり、管理の複雑さとコストを考えると、この方法が最適です。
Q5. GTMのコンテナIDを確認する方法は?
GTMのコンテナIDは、管理画面またはWebサイトのソースコードから確認できます。 コンテナIDはGTM-XXXXXXXという形式で、7文字の英数字で構成されています。
方法1: GTM管理画面から確認
- Googleタグマネージャーにログイン
- 左上のアカウント名をクリック
- 確認したいコンテナを選択
- 画面右上にコンテナID(
GTM-XXXXXXX)が表示される
または:
- GTM管理画面で「管理」タブをクリック
- 「コンテナの設定」を選択
- コンテナIDが表示される
方法2: Webサイトのソースコードから確認
現在運用中のWebサイトに設置されているコンテナIDを確認する場合:
- 対象のWebサイトをブラウザで開く
- 右クリック→「ページのソースを表示」(または Ctrl+U / Command+U)
- 「Ctrl+F」で
GTM-を検索 GTM-XXXXXXXという形式のIDが見つかる
方法3: ブラウザの開発者ツールから確認
より詳細に確認する場合:
- F12キーを押して開発者ツールを開く
- 「Network」タブを選択
- ページを再読み込み
- フィルターに
gtm.jsと入力 - リクエストURLに
id=GTM-XXXXXXXという形式でコンテナIDが含まれている
複数のコンテナが設置されている場合:
同じページに複数のGTMコンテナが設置されている場合、ソースコードには複数のGTM-で始まるIDが存在します。それぞれを確認することで、どのコンテナが設置されているかを把握できます。
Tag Assistantを使用する方法:
Google Chrome拡張機能「Tag Assistant Legacy」を使用すると:
- 拡張機能をインストール
- 対象のWebサイトを開く
- Tag Assistantアイコンをクリック
- 設置されているGTMコンテナIDがすべて表示される
コンテナIDは、トラブルシューティングや外部パートナーとのコミュニケーションで頻繁に必要になるため、管理ドキュメントに記録しておくことをお勧めします。
まとめ:GTM複数設置は本当に必要か再検討しよう
Googleタグマネージャー(GTM)の複数設置は技術的に可能ですが、パフォーマンスの低下、dataLayerの競合、管理の複雑化といったリスクを伴います。 この記事で解説した内容を振り返り、本当に複数設置が必要かを再検討しましょう。
複数設置のメリット・デメリット総括
| 項目 | メリット | デメリット |
|---|---|---|
| 管理の独立性 | 部門やパートナーごとに完全分離 | 全体像の把握が困難 |
| 権限管理 | 物理的に分離された管理 | ワークスペース+権限設定で同等の効果が得られる |
| パフォーマンス | なし | ページ速度が明確に低下 |
| dataLayer | なし | 競合や上書きのリスク |
| デバッグ | なし | トラブルシューティングが複雑化 |
推奨される管理方法の再確認
本記事で紹介した代替案を優先度順にまとめます:
- 最優先: 単一コンテナ+ワークスペース+権限設定
- ほとんどのケースでこれで十分
- パフォーマンスと管理のバランスが最良
- 次善策: GTM 360のゾーン機能
- 外部パートナーとの協業が必須の場合
- セキュリティと柔軟性の両立
- 技術的な解決: サーバーサイドGTM
- 高度な要件や大規模サイト向け
- パフォーマンスとプライバシー制御を重視
- 最終手段: 複数コンテナの慎重な設置
- 他の方法では解決できない場合のみ
- プライマリ+セカンダリ構成で実装
実装前のチェックリスト
GTM複数設置を検討する前に、以下を確認してください:
- [ ] 単一コンテナ+ワークスペースで対応できないか検討した
- [ ] 各コンテナの役割と必要性を明確に文書化した
- [ ] パフォーマンスへの影響を測定・許容できる
- [ ] dataLayerの設計を見直し、競合を防ぐ計画がある
- [ ] デバッグとトラブルシューティングの体制が整っている
- [ ] 管理者とアクセス権限を明確に定義した
- [ ] 定期的な監査とレビューのスケジュールを設定した
GTMは本来、複数のタグを一元管理することで作業を効率化するツールです。 その趣旨に立ち返り、可能な限りシンプルな構成で運用することが、長期的な成功につながります。
もし現在複数のGTMコンテナを設置していて問題に直面している場合、または新たに複数設置を検討している場合は、この記事の内容を参考に、本当にそれが最善の選択肢なのかを改めて検討してみてください。多くのケースでは、よりシンプルで効率的な代替案が存在します。