Googleタグマネージャー(GTM)のメリット完全ガイド|一括管理で実現する効率化

Webサイトのタグ管理に課題を感じていませんか?Googleアナリティクスや広告タグの追加・変更のたびに、エンジニアに依頼して時間がかかる、ページの読み込み速度が遅くなる、タグの設定ミスでデータが正しく計測できない…こうした悩みを解決するのが、Googleタグマネージャー(GTM)です。

Googleタグマネージャーは、Webサイトに設置する各種タグを一括管理できる無料ツールで、コード編集なしでタグの追加・変更・削除が可能になります。マーケティング担当者が自分でタグを管理できるため、施策のスピードが格段に向上し、サイトパフォーマンスも改善します。

本記事では、GTMの7つの主要メリットから具体的な導入手順、運用のベストプラクティスまで、初心者の方にもわかりやすく徹底解説します。この記事を読めば、GTM導入の判断材料が揃い、実際の設定方法まで理解できるようになります。


目次

Googleタグマネージャー(GTM)とは?基本を理解する

GTMの役割と仕組み

Googleタグマネージャー(GTM)は、Webサイト上で動作するさまざまな「タグ」を一元管理するための無料ツールです。タグとは、Googleアナリティクスや広告の計測コード、ヒートマップツールなど、サイトに埋め込む小さなJavaScriptコードの総称です。

従来、これらのタグはHTMLファイルに直接記述する必要がありました。つまり、新しい広告タグを追加したい、アナリティクスの設定を変更したいといった場合、毎回HTMLコードを編集しなければならず、エンジニアへの依頼が必須でした。

GTMは「コンテナタグ」という仕組みで、この課題を解決します。サイトには最初に1つだけGTMのコンテナタグを設置するだけで、以降はGTMの管理画面上で各種タグを自由に追加・編集・削除できるようになります。HTMLファイルに触れることなく、マーケティング担当者が直接タグを管理できるのです。

タグマネジメントツールとしてのGTMの位置づけは、「タグの司令塔」と言えます。複数のマーケティングツールのタグを整理し、適切なタイミングで配信し、パフォーマンスを最適化する役割を担います。

従来のタグ管理との最大の違いは、「管理の一元化」と「作業の効率化」です。従来は各HTMLページに個別にタグを埋め込んでいたため、タグの追加・変更に時間がかかり、ミスも発生しやすい状況でした。GTMでは、すべてのタグを1つの管理画面で集中管理できるため、作業時間の短縮とミスの削減を同時に実現します。

どんな企業・サイトに必要なのか

GTMは、以下のような企業やWebサイトで特に効果を発揮します。

複数のマーケティングツールを使用している企業では、Googleアナリティクス、Google広告、Facebook広告、Yahoo!広告、ヒートマップツール、チャットボットなど、5つ以上のツールを併用しているケースが多くあります。それぞれのタグを個別に管理するのは非効率で、GTMで一括管理することで作業効率が大幅に向上します。

頻繁にタグの追加・変更が発生するサイトも、GTMの導入メリットが大きいです。キャンペーンごとに広告タグを変更する、A/Bテストを頻繁に実施する、新しいマーケティング施策を次々と試すといった場合、従来の方法では毎回エンジニアに依頼する必要がありました。GTMならマーケティング担当者が自分で即座に対応できます。

開発リソースが限られている組織にとっても、GTMは強力な味方です。社内にエンジニアがいない、外部の制作会社に依頼している、エンジニアがコア業務に集中したいといった状況では、タグ管理のためだけにエンジニアの時間を使うのはもったいないです。GTMを導入すれば、非エンジニアでもタグ管理が可能になり、開発リソースを本来の業務に集中させられます。

逆に、シンプルな情報サイトでタグがGoogleアナリティクスだけ、更新頻度も低いといった場合は、GTM導入のメリットは限定的かもしれません。ただし、将来的な拡張性を考えると、早めに導入しておくことも選択肢の1つです。


Googleタグマネージャー7つの主要メリット

【メリット1】完全無料で利用可能

GTMの最大の魅力の1つが、完全無料で利用できる点です。Googleアカウントさえあれば、誰でもすぐに使い始められます。月額料金や従量課金も一切なく、タグの数やページビュー数に関係なく無料で利用できます。

Google製品との高い互換性も大きなメリットです。Googleアナリティクス4(GA4)、Google広告、Googleサーチコンソールなど、主要なGoogleマーケティングツールとシームレスに連携します。特にGA4とは、テンプレートが用意されており、数クリックで設定が完了するほど簡単です。

コスト削減効果の具体例を見てみましょう。従来の方法でタグ管理を行う場合、エンジニアへの依頼費用が発生します。1回のタグ追加・変更で5,000円〜10,000円、外部の制作会社であればさらに高額になることもあります。月に5回タグ変更があれば、年間で30万円〜60万円のコストです。GTMを導入すれば、これらのコストをゼロにできます。

有料タグマネージャーとの比較では、Adobe Dynamic Tag Management、Tealiumなどの企業向け有料ツールと比べても、GTMは機能面で遜色ありません。大規模エンタープライズ向けの特殊な機能が必要な場合を除き、GTMで十分に対応できます。初期費用や月額費用が数十万円かかる有料ツールと比べ、無料で同等の機能が使えるGTMのコストパフォーマンスは圧倒的です。

【メリット2】コード編集不要でタグを一括管理

GTMの革新的な点は、HTMLの直接編集が不要になることです。従来は、新しいタグを追加するたびに、HTMLファイルを開いて特定の位置にコードをコピー&ペーストし、ファイルをアップロードする必要がありました。この作業には技術的な知識が必要で、ミスも起こりやすい状況でした。

GTMでは、非エンジニアでも操作可能な管理画面が用意されています。Webブラウザ上で直感的に操作でき、ドラッグ&ドロップやフォーム入力で設定が完了します。タグの種類(Googleアナリティクス、Facebook広告など)を選び、必要な情報(計測IDなど)を入力し、配信条件(トリガー)を設定するだけです。プログラミングの知識は一切必要ありません。

開発者への依存度を大幅に削減できることで、マーケティング部門の自律性が高まります。従来は「タグを追加したい→エンジニアに依頼→対応を待つ→確認→修正依頼→再度待つ」という長いプロセスが必要でした。GTMでは「GTM管理画面で設定→プレビュー確認→公開」と、すべて自分で完結できます。

一括管理のメリットは、効率性だけではありません。すべてのタグが1つの画面で可視化されるため、「どのページにどのタグが配信されているか」が一目でわかります。タグの重複や設定漏れを発見しやすく、サイト全体のタグ戦略を俯瞰できるようになります。

【メリット3】マーケティング施策のスピードアップ

GTM導入による最も実感しやすいメリットが、施策実行のスピードアップです。タグ追加・変更にかかる時間の短縮事例を見ると、従来は数日〜1週間かかっていた作業が、GTMでは数分〜数時間で完了します。

具体的な例を挙げましょう。新しいキャンペーンで特定の広告タグを追加したい場合、従来の方法では以下のステップが必要でした。

  1. エンジニアに依頼書を作成(30分)
  2. エンジニアの対応待ち(1〜3日)
  3. 実装・テスト(エンジニア側で半日〜1日)
  4. 確認・修正依頼(往復で1〜2日)
  5. 本番反映(数時間〜1日)

合計で早くても3日、通常は1週間程度かかっていました。GTMでは、マーケティング担当者が自分で設定し、10分でプレビュー確認、問題なければ即座に公開できます。この差は、ビジネススピードに直結します。

リアルタイムでの施策実行が可能になることで、市場の変化に即座に対応できます。競合が新しいキャンペーンを開始した、トレンドが急変したといった状況で、数時間〜数日の差が大きな競争優位性を生みます。

A/Bテストや広告タグの迅速な導入も容易になります。A/Bテストでは、複数のパターンを試して効果を比較しますが、従来の方法では各パターンの実装に時間がかかり、テスト期間が長期化していました。GTMでは、複数のタグバージョンを用意し、トリガー条件を変えることで、柔軟にテストを実施できます。

【メリット4】サイトパフォーマンスの向上

GTMは、Webサイトの表示速度とパフォーマンスを改善する効果があります。ページ読み込み速度の改善メカニズムを理解するには、従来のタグ管理の問題点を知る必要があります。

従来、複数のタグを直接HTMLに埋め込むと、それぞれのタグが同期的に読み込まれていました。つまり、1つのタグの読み込みが完了するまで、次のタグや本文の表示が遅れるという問題がありました。タグが5個あれば、5回の遅延が発生します。

GTMでは、非同期読み込みによるUX向上が実現されます。GTMのコンテナタグ自体が非同期で読み込まれ、さらにその中の各タグも効率的に読み込まれます。これにより、タグの読み込みがページ表示をブロックせず、ユーザーは素早くコンテンツを閲覧できます。

また、GTMでは不要なタグを簡単に削除・無効化できるため、タグの最適化が容易です。キャンペーン終了後の広告タグ、使わなくなったツールのタグなど、残しがちな不要タグを定期的に整理することで、サイトのパフォーマンスを維持できます。

SEOへのポジティブな影響も見逃せません。Googleは、ページ読み込み速度を検索順位の要因の1つとしています。Core Web Vitals(LCP、FID、CLSなど)の指標において、GTMによる読み込み最適化は改善に貢献します。実際、GTM導入後にページ速度スコアが向上したという報告は多数あります。

【メリット5】バージョン管理と復元機能

GTMの強力な機能の1つが、変更履歴の完全な記録です。GTMでは、タグ・トリガー・変数のすべての変更が自動的に記録され、いつ、誰が、何を変更したかが明確に残ります。

これは単なる履歴記録ではなく、実用的な価値があります。「先月の設定に戻したい」「この変更は誰が行ったのか」「どの設定が効果的だったか」といった疑問に、すぐに答えられます。

トラブル時の迅速なロールバック機能は、安心感をもたらします。新しいタグ設定を公開した後、何か問題が発生した場合、以前のバージョンに数クリックで戻せます。従来の方法では、問題のあるコードを特定し、修正し、再度アップロードする必要があり、その間サイトに悪影響が出続けました。GTMでは、問題発生から復旧までの時間を数分に短縮できます。

具体的な手順は以下の通りです。

  1. GTM管理画面の「バージョン」タブを開く
  2. 以前のバージョンを選択
  3. 「公開」ボタンをクリック

これだけで、過去の安定した状態に戻せます。

誰がいつ何を変更したかの可視化は、チーム運用において重要です。複数人でGTMを運用する場合、誰かが設定を変更しても、他のメンバーがそれを把握できなければ混乱が生じます。GTMでは、変更履歴に担当者名とタイムスタンプが記録されるため、透明性が保たれます。

また、各バージョンにメモを残せる機能もあり、「キャンペーンXX開始に伴う設定」などと記録しておくことで、後から見返した時に変更の意図が理解できます。

【メリット6】プレビュー・デバッグ機能

GTMの実務で最も重宝される機能の1つが、公開前のテスト環境であるプレビューモードです。新しいタグ設定を作成した後、いきなり本番環境で公開するのはリスクがあります。GTMでは、「プレビュー」ボタンをクリックすることで、自分のブラウザだけで新しい設定をテストできます。

プレビューモードでは、以下のことが確認できます。

  • タグが正しいページで配信されているか
  • トリガー条件が意図通りに動作しているか
  • 各タグが正しく発火(実行)しているか
  • データレイヤー変数が正しく取得できているか

エラーチェック機能による正確なデータ収集も重要です。GTMには、設定ミスを検出する機能が組み込まれています。例えば、必須項目が入力されていない、タグIDが間違っている、トリガー条件に矛盾があるといった問題を、公開前に警告してくれます。

タグの動作確認フローを具体的に説明します。

  1. 新しいタグを作成・設定
  2. 「プレビュー」ボタンをクリック
  3. 別のタブで自社サイトが開かれる(プレビューモード)
  4. 実際にページを操作(クリック、フォーム送信など)
  5. GTMのデバッグパネルで、タグが発火したかを確認
  6. Googleアナリティクスのリアルタイムレポートでデータ送信を確認
  7. 問題なければ「送信」→「公開」

このフローにより、本番環境に影響を与えることなく、安全にテストできます。複数人でテストする場合も、プレビューリンクを共有することで、チームメンバーが同じ設定を確認できます。

【メリット7】チーム協働とアクセス制御

組織でGTMを運用する場合、ワークスペース機能による同時作業が非常に便利です。ワークスペースとは、GTM内の独立した作業環境で、複数のメンバーが互いに干渉せずに作業できる仕組みです。

例えば、Aさんが新しいキャンペーンタグを設定している間に、Bさんが既存タグのトラブルシューティングを行う、といった同時並行作業が可能です。それぞれのワークスペースで作業を完了させ、問題なければマージ(統合)して公開します。

権限管理で安全な運用を実現する機能も充実しています。GTMでは、ユーザーごとに以下の権限レベルを設定できます。

  • 管理者:すべての操作が可能
  • 公開:タグの作成・編集・公開が可能
  • 編集:タグの作成・編集のみ可能(公開は不可)
  • 読み取り:閲覧のみ可能(変更不可)

これにより、新人スタッフには「編集」権限のみを与え、ベテランスタッフが確認してから公開する、といった運用が可能です。誤って重要なタグを削除してしまう、設定ミスのまま公開してしまうといったリスクを軽減できます。

承認フローの設定方法は、エンタープライズ組織で特に重要です。GTM360(大規模組織向けの有料版)では、公開前に承認プロセスを組み込めます。無料版でも、ワークスペースとチーム運用ルールの組み合わせで、疑似的な承認フローを実現できます。

例えば、「新しいタグはワークスペースで作成→Slackで管理者に通知→管理者が確認後に公開」といった運用ルールを定めることで、安全性を高められます。


GTMで管理できる主要なタグ一覧

Google系ツールのタグ

GTMが最も得意とするのが、**Googleアナリティクス(GA4/UA)**のタグ管理です。GA4(Googleアナリティクス4)は、2023年7月にユニバーサルアナリティクス(UA)の後継として本格移行が完了したGoogleの最新アナリティクスツールです。

GTMには「Googleアナリティクス:GA4設定」というテンプレートが用意されており、測定ID(G-XXXXXXXXXXの形式)を入力するだけで基本設定が完了します。さらに、イベントトラッキング(ボタンクリック、スクロール深度、動画再生など)も、GTMのトリガー機能と組み合わせることで、コードを書かずに設定できます。

Google広告コンバージョンタグも、GTMで簡単に管理できます。Google広告で商品購入や問い合わせなどのコンバージョンを計測する際、従来は各コンバージョンページにタグを埋め込む必要がありました。GTMでは、コンバージョンID・ラベルを入力し、トリガーで「特定のページ表示」を設定するだけで完了します。

Googleサーチコンソール連携は、直接的なタグではありませんが、GTMを通じてサイト所有権の確認ができます。GTMコンテナIDを使用したサーチコンソールの所有権確認方法が用意されており、メタタグを別途追加する必要がありません。

広告・マーケティングツールのタグ

Facebook/Meta広告ピクセルは、GTMで管理する代表的なサードパーティタグです。Metaピクセル(旧Facebookピクセル)をGTMで設定することで、Facebook・Instagram広告のコンバージョン計測、リターゲティング、オーディエンス構築が可能になります。

GTMのカスタムHTMLタグを使用し、Metaから提供されるピクセルコードを貼り付けます。さらに、標準イベント(Purchase、Lead、CompleteRegistrationなど)も、GTMのデータレイヤーと組み合わせることで、動的に送信できます。

Yahoo!広告タグも、日本市場では重要です。Yahoo!広告のサイトジェネラルタグとコンバージョン測定タグの両方を、GTMで一元管理できます。特に、複数のYahoo!広告アカウントを運用している場合、GTMで整理することで管理が格段に楽になります。

LINE広告タグは、日本国内で急成長している広告媒体です。LINE TagをGTMで設定することで、LINEアプリユーザーへのリターゲティングやコンバージョン計測が可能になります。設定方法は、LINE広告管理画面で発行されるベースコードとカスタムコードを、GTMのカスタムHTMLタグとして追加します。

その他サードパーティツールとして、Twitter(X)広告ピクセル、TikTok広告ピクセル、Microsoft(Bing)広告UETタグなど、主要な広告プラットフォームのタグすべてがGTMで管理できます。

その他の便利なタグ

ヒートマップツールのタグも、GTMで効率的に管理できます。Hotjar、Clarity(Microsoft)、Ptengineなどのヒートマップツールは、ユーザーのクリック位置やスクロール深度を可視化する便利なツールです。これらのツールが提供するトラッキングコードを、GTMのカスタムHTMLタグとして追加することで、全ページに一括配信できます。

特定のページだけでヒートマップを計測したい場合も、GTMのトリガー条件(Page Pathなど)を使って柔軟に設定できます。テスト期間だけ有効にして、終了後は無効化する、といった運用も簡単です。

チャットボットのタグ管理もGTMの得意分野です。Intercom、Drift、チャットプラス、Chatworkなどのチャットボットやカスタマーサポートツールは、JavaScriptタグをサイトに埋め込んで動作します。GTMで管理することで、特定のページだけでチャットボットを表示する、ログインユーザーにのみ表示するといった条件分岐が可能になります。

カスタムHTML/JavaScriptは、GTMの柔軟性を最大限に活用できる機能です。独自のトラッキングコード、サードパーティツールの特殊な設定、カスタムイベントの送信など、あらゆるJavaScriptコードをGTMから配信できます。

例えば、「特定のボタンがクリックされた時に、データをAPIに送信する」といった高度な処理も、カスタムHTMLタグとトリガーの組み合わせで実現できます。これにより、エンジニアに依頼せずに、マーケティング担当者が独自の計測・施策を実装できるようになります。


GTM導入のデメリットと注意点

学習コストがかかる

GTMは強力なツールですが、初期設定の複雑さは無視できません。初めてGTMに触れる方にとって、管理画面の構成、専門用語、設定項目の多さは圧倒的に感じられるかもしれません。

特に、トリガーや変数の理解が必要な点が、初心者にとってのハードルです。トリガーとは「タグをいつ配信するか」の条件設定で、「すべてのページ」「特定のURL」「ボタンクリック時」など、多様な選択肢があります。変数とは、ページURL、クリック要素、カスタムデータなど、動的な値を扱う仕組みです。

これらの概念を理解し、適切に組み合わせるには、ある程度の学習が必要です。習得までの時間は、個人差がありますが、基本的な設定ができるようになるまで2〜4週間、応用的な設定まで含めると2〜3ヶ月程度の継続的な学習が推奨されます。

ただし、この学習コストは一度払えば長期的にリターンが得られる投資です。習得後は、タグ管理の効率が飛躍的に向上し、学習にかけた時間を大きく上回る時間節約が実現します。

学習方法としては、Google公式の「タグマネージャーアカデミー」(無料のオンライン学習コース)、YouTube動画、技術ブログ、実際に手を動かしながら試すことが効果的です。

設定ミスのリスク

GTMは便利な反面、タグの重複配信というトラブルが発生しやすい側面があります。例えば、GoogleアナリティクスのタグをHTMLに直接埋め込んだまま、GTMでも同じタグを設定してしまうと、データが二重計測されてしまいます。

データ計測の不正確さは、マーケティング判断に直結する重大な問題です。トリガー設定のミスでタグが配信されない、逆に意図しないページで配信されてしまう、変数の設定ミスで間違ったデータが送信されるといったことが起こり得ます。

対策と確認方法として、以下の手順を推奨します。

  1. 既存タグの完全削除:GTM移行時に、HTMLから既存のタグをすべて削除する
  2. プレビューモードの活用:公開前に必ずプレビューで動作確認する
  3. 段階的な公開:すべてのタグを一度に移行せず、1つずつ確認しながら進める
  4. ダブルチェック体制:可能であれば、2人で設定内容を確認する
  5. 定期的な監査:月に1回程度、タグの配信状況とデータを確認する

また、GoogleアナリティクスやGoogle広告の管理画面で、データの異常(急激な増減、重複など)がないかを監視することも重要です。

すべてのタグに適しているわけではない

GTMは万能ではなく、GTMに向かないタグの例も存在します。

まず、サイトの基本機能に関わるタグは、GTMではなく直接埋め込む方が安全です。例えば、セキュリティ関連のスクリプト、サイトの表示に必須のJavaScript、決済システムの重要なコードなどは、GTMの読み込みタイミングに依存すると問題が発生する可能性があります。

直接埋め込みが推奨されるケースとして、以下が挙げられます。

  • Cookieバナーやプライバシーポリシーの同意管理ツール(一部例外あり)
  • ページ表示前に実行する必要があるスクリプト
  • SEO構造化データのJSON-LD(GTMでも可能だが、直接埋め込みが一般的)
  • A/Bテストツールの一部(フリッカー防止のため)

ただし、技術的にはこれらもGTMで管理可能なケースが多く、状況に応じて判断が必要です。不安な場合は、エンジニアやGTMの専門家に相談することをお勧めします。


GTM導入前に確認すべきポイント

現在のタグ管理状況の棚卸し

GTM導入の第一歩は、既存タグのリストアップです。現在サイトに埋め込まれているタグをすべて洗い出し、一覧表にまとめます。確認方法は以下の通りです。

  1. Chrome DevToolsで確認:Chromeブラウザで自社サイトを開き、F12キーでDevToolsを開く。「Elements」タブでHTMLソースを確認し、<script>タグを探す
  2. ページソースを確認:ブラウザで「ページのソースを表示」を選び、GoogleアナリティクスのトラッキングID(UA-XXXXXXXX-XやG-XXXXXXXXXX)、広告タグのIDなどを検索する
  3. 既存のドキュメント確認:サイト制作時のドキュメントや設定資料があれば参照する

リストアップする項目は、タグの種類(GA4、Google広告、Facebookピクセルなど)、タグID、設置ページ、設置日、目的です。

各タグの役割と優先度の整理も重要です。現在も使用中のタグ、過去のキャンペーンで使った古いタグ、目的が不明なタグなどを分類します。この作業により、不要なタグを削除する機会にもなり、サイトのパフォーマンス向上につながります。

優先度としては、Googleアナリティクスなどの重要な計測タグを最優先で移行し、その後に広告タグ、最後に補助的なツールのタグという順序が一般的です。

移行計画の策定

段階的な移行スケジュールを立てることで、リスクを最小化できます。一度にすべてのタグをGTMに移行するのではなく、3段階に分けた移行が推奨されます。

第1段階(1〜2週間):テスト環境でGTMを設定し、動作確認する。この段階では、本番サイトには影響を与えません。

第2段階(2〜4週間):本番サイトにGTMコンテナタグを設置するが、既存のタグは残したまま、GTMからも同じタグを配信する(二重計測状態)。両方のデータを比較し、GTM側が正しく動作していることを確認します。

第3段階(1〜2週間):GTM側のデータが正確であることを確認後、HTML内の既存タグを削除し、GTMのみからタグを配信する状態に移行します。

テスト環境の準備は、可能であれば実施すべきです。本番サイトと同じ構成のステージング環境やローカル環境があれば、そこで先にGTMを試すことで、本番での問題を事前に発見できます。

バックアップの取得も忘れずに行います。GTM移行時にHTMLからタグを削除する前に、必ず以下のバックアップを取ります。

  1. 現在のHTMLファイル全体のバックアップ
  2. 削除するタグコードのコピー(後で復元が必要になった場合に備えて)
  3. 現在のアナリティクスデータのスクリーンショットや記録

チーム体制の構築

運用担当者の決定は、GTM導入成功の鍵です。GTMは技術的な側面とマーケティング的な側面の両方を持つため、以下のような体制が理想的です。

  • メイン担当者:GTMの設定・管理を主導する人(マーケティング担当者またはWebアナリスト)
  • サブ担当者:メイン担当者不在時のバックアップ
  • 技術支援:トラブル時に相談できるエンジニアまたは外部パートナー

1人の担当者に依存する「属人化」を避けるため、複数人が基本的な操作を理解している状態が望ましいです。

教育・トレーニング計画として、以下のステップを推奨します。

  1. 初期トレーニング(2〜4時間):GTMの基本概念、管理画面の使い方、簡単なタグ設定の実習
  2. ハンズオンセッション(週1回×4週間):実際の業務タスクを題材に、GTMで設定する練習
  3. ドキュメント作成:自社のGTM運用ルール、命名規則、トラブルシューティングガイドをまとめる
  4. 定期的な情報共有:月1回程度、新しいタグ設定や気づきを共有する場を設ける

外部のGTMトレーニングサービスや、Google公式の学習リソースも活用できます。


GTMの具体的な導入手順(初心者向け)

アカウントとコンテナの作成

Googleアカウントでの登録は、非常にシンプルです。以下の手順で進めます。

  1. Googleタグマネージャー公式サイトにアクセス
  2. 右上の「タグマネージャーにログイン」または「無料で利用する」をクリック
  3. Googleアカウント(GmailやGoogle Workspaceアカウント)でログイン
  4. 「アカウントを作成」をクリック

アカウント作成画面では、以下の情報を入力します。

  • アカウント名:会社名またはプロジェクト名(例:「株式会社〇〇」「〇〇サイト」)
  • 国:日本を選択
  • データ共有設定:Googleとデータを共有するかどうか(任意)

次に、コンテナタグの発行に進みます。アカウント作成後、自動的にコンテナ作成画面が表示されます。

  • コンテナ名:Webサイトのドメイン名(例:「example.com」)
  • ターゲットプラットフォーム:「ウェブ」を選択(他にiOS、Androidもあるが、Webサイトの場合は「ウェブ」)

「作成」をクリックすると、利用規約が表示されるので、内容を確認して「はい」をクリックします。

すると、GTMコンテナコードが表示されます。これは、2つの<script>タグで構成されており、1つ目は<head>タグ内に、2つ目は<body>タグ直後に設置します。このコードをコピーして保存しておきます。

GTMのコンテナIDは「GTM-XXXXXXX」という形式で、これが今後の作業で必要になります。

サイトへのコンテナタグ設置

WordPressでの設置方法は、プラグインを使う方法と、テーマファイルに直接追加する方法の2つがあります。

方法1:プラグインを使用(推奨)

  1. WordPressダッシュボードにログイン
  2. 「プラグイン」→「新規追加」をクリック
  3. 「GTM4WP」または「Site Kit by Google」を検索してインストール・有効化
  4. プラグインの設定画面でGTMコンテナID(GTM-XXXXXXX)を入力
  5. 設定を保存

方法2:テーマファイルに直接追加

  1. 「外観」→「テーマエディター」をクリック(または、FTPでサーバーにアクセス)
  2. header.phpファイルを開く
  3. </head>タグの直前に、GTMの1つ目のコードを貼り付け
  4. <body>タグの直後に、GTMの2つ目のコードを貼り付け
  5. ファイルを更新

HTMLサイトでの設置箇所は、すべてのHTMLファイルに対して、同様に<head>内と<body>直後にコードを追加します。複数ページがある場合、テンプレートファイルや共通ヘッダーファイルに追加することで、全ページに一括適用できます。

正しく設置できているかの確認は、以下の方法で行います。

  1. GTMのプレビューモード:GTM管理画面で「プレビュー」をクリックし、自社サイトのURLを入力。正しく設置されていれば、「Tag Assistant Connected」と表示される
  2. Chromeブラウザの確認:サイトを開き、F12キーでDevToolsを開く。「Console」タブで「Google Tag Manager」と検索し、エラーがないか確認
  3. Tag Assistant Legacy(Chrome拡張機能):拡張機能をインストールし、サイトを開くとGTMが検出される

これらの方法で、GTMコンテナタグが正しく動作していることを確認します。

最初のタグ設定(Googleアナリティクス4)

GTM導入後、最初に設定すべきタグは、GA4タグの追加手順です。

  1. GTM管理画面で「タグ」→「新規」をクリック
  2. タグ名を入力(例:「GA4 – ページビュー」)
  3. 「タグの設定」エリアをクリックし、「Googleアナリティクス:GA4設定」を選択
  4. 測定ID(G-XXXXXXXXXXの形式)を入力(GA4管理画面の「データストリーム」で確認可能)
  5. 「トリガー」エリアをクリック

トリガーの設定では、「All Pages(すべてのページ)」を選択します。これにより、サイトのすべてのページでGA4タグが配信されます。

設定が完了したら、右上の「保存」をクリックします。

プレビューモードでの動作確認を必ず行います。

  1. 「プレビュー」ボタンをクリック
  2. 自社サイトのURLを入力して接続
  3. サイトが別タブで開かれ、GTMのデバッグパネルが表示される
  4. 「Tags Fired」(発火したタグ)の欄に、先ほど作成した「GA4 – ページビュー」タグが表示されていることを確認
  5. GA4の管理画面で「リアルタイム」レポートを開き、自分のアクセスが記録されているか確認

問題がなければ、プレビューモードを終了します。

公開とバージョン管理は、以下の手順で行います。

  1. GTM管理画面右上の「送信」ボタンをクリック
  2. バージョン名(例:「GA4タグ初期設定」)と説明(例:「GA4ページビュータグを追加」)を入力
  3. 「公開」ボタンをクリック

これで、本番サイトにGA4タグが配信されます。公開後も、GA4のリアルタイムレポートで実際のユーザーのアクセスが記録されているかを確認しましょう。


GTM運用のベストプラクティス

命名規則の統一

タグ・トリガー・変数の命名ルールを最初に決めておくことで、後の運用が格段にスムーズになります。GTMでタグが増えてくると、「このタグは何のタグだっけ?」と混乱するケースが頻発します。

推奨される命名規則の例を紹介します。

タグの命名:「ツール名 – タグタイプ – 詳細」

  • 例:「GA4 – イベント – お問い合わせ送信」
  • 例:「Facebook – コンバージョン – 商品購入」
  • 例:「Yahoo!広告 – コンバージョン – 資料請求」

トリガーの命名:「トリガータイプ – 対象」

  • 例:「ページビュー – すべてのページ」
  • 例:「クリック – お問い合わせボタン」
  • 例:「ページビュー – サンキューページ」

変数の命名:「変数タイプ – 用途」

  • 例:「DataLayer – 商品ID」
  • 例:「URL – 問い合わせページ判定」

チームでの共有方法として、以下を推奨します。

  1. ドキュメント化:Googleスプレッドシートやドキュメントで、命名規則のガイドラインを作成
  2. オンボーディング:新メンバーが参加する際、最初に命名規則を伝える
  3. 定期レビュー:月1回程度、命名規則に沿っていないタグがないかチェック

命名規則を守ることで、誰が見ても理解できるGTM環境が維持されます。

定期的なメンテナンス

不要タグの削除は、四半期ごとに実施することをお勧めします。終了したキャンペーンの広告タグ、使わなくなったツールのタグ、テスト用に作成したタグなどが蓄積すると、管理が煩雑になり、サイトのパフォーマンスにも悪影響を与えます。

削除の手順は、以下の通りです。

  1. 不要なタグを特定(最終使用日、キャンペーン終了日などを確認)
  2. 削除する前に、一旦「一時停止」(無効化)して様子を見る
  3. 問題がなければ、正式に削除
  4. バージョンを公開し、変更履歴に「不要タグ削除」と記録

パフォーマンスチェックも重要です。GTMには、タグの読み込み時間を確認する機能はありませんが、Google PageSpeed InsightsやGTmetrixなどの外部ツールで、サイト全体のパフォーマンスを定期的にチェックします。

特に、カスタムHTMLタグで重い処理を実行している場合、サイトの速度に影響することがあります。そのような場合は、コードの最適化や、タグの配信条件の見直しを検討します。

ドキュメント管理として、以下の情報を記録します。

  • 各タグの目的と設定内容
  • 変更履歴(いつ、誰が、何を変更したか)
  • トラブル対応記録(問題が発生した時の原因と解決方法)

これらをNotionやConfluence、Googleドキュメントなどのツールでまとめておくと、属人化を防ぎ、チーム全体でスムーズに運用できます。

セキュリティとプライバシー対応

個人情報の取り扱いには、特に注意が必要です。GTMのデータレイヤーや変数で、誤ってメールアドレス、電話番号、氏名などの個人情報を送信してしまうケースがあります。

Googleアナリティクスをはじめ、多くのツールの利用規約では、個人を特定できる情報(PII)の送信が禁止されています。GTMで変数を設定する際、個人情報が含まれていないかを必ず確認しましょう。

同意管理プラットフォームとの連携は、GDPR(EU一般データ保護規則)やCCPA(カリフォルニア州消費者プライバシー法)などのプライバシー規制に対応するために重要です。

GTMは、Cookiebot、OneTrust、Osanoなどの同意管理プラットフォーム(CMP)と連携できます。ユーザーがCookieに同意した場合のみ、特定のタグ(広告タグなど)を配信する設定が可能です。

Cookie規制への対応として、日本国内でも個人情報保護法の改正により、Cookieの扱いに関する意識が高まっています。GTMでは、以下のような対応が推奨されます。

  1. 同意前は最低限のタグのみ配信:Googleアナリティクスなど、必須のタグのみ配信し、広告タグは同意後に配信
  2. Consent Mode(同意モード)の活用:Googleが提供する機能で、ユーザーの同意状態に応じてタグの動作を調整
  3. プライバシーポリシーの明示:サイト上で、どのようなタグ・Cookieを使用しているかを明記

これらの対応により、法令遵守とユーザーの信頼を両立できます。


GTMと他ツールの連携活用事例

GA4との連携で実現できること

イベントトラッキングの自動化は、GTMとGA4の連携で最も活用される機能です。ボタンクリック、フォーム送信、動画再生、ファイルダウンロード、外部リンクのクリックなど、ユーザーの行動をイベントとして自動計測できます。

具体例として、「お問い合わせボタンのクリック」をイベントとして計測する方法を説明します。

  1. GTMで「トリガー」を作成:タイプ「すべての要素」のクリック、条件「Click Text」に「お問い合わせ」を含む
  2. GTMで「タグ」を作成:タイプ「Googleアナリティクス:GA4イベント」、イベント名「contact_click」、トリガーに上記を設定
  3. プレビューで確認後、公開

これで、ユーザーが「お問い合わせ」ボタンをクリックするたびに、GA4にイベントが送信されます。

eコマースデータの送信も、GTMを使うと効率的です。商品購入、カート追加、チェックアウトなどのeコマースイベントを、データレイヤーを通じてGA4に送信することで、詳細な売上分析が可能になります。

例えば、商品購入完了時に以下のデータレイヤーをページに設置します(開発者と協力して実装)。

dataLayer.push({
  'event': 'purchase',
  'ecommerce': {
    'transaction_id': '12345',
    'value': 25.42,
    'currency': 'JPY',
    'items': [...]
  }
});

GTM側では、このデータレイヤーをトリガーとして、GA4のeコマースイベントタグを配信します。

カスタムディメンション設定により、GTMで取得したデータ(ログイン状態、会員種別、記事カテゴリなど)をGA4のカスタムディメンションとして送信できます。これにより、より詳細なセグメント分析が可能になります。

広告効果測定の効率化

コンバージョン計測の一元化は、GTMの大きな強みです。Google広告、Facebook広告、Yahoo!広告、LINE広告など、複数の広告媒体のコンバージョンタグを、GTMで一元管理できます。

例えば、「お問い合わせ完了ページ」を共通のコンバージョンポイントとする場合、1つのトリガー(ページビュー:お問い合わせ完了ページ)を作成し、それに対して各広告媒体のコンバージョンタグを紐付けます。

これにより、新しい広告媒体を追加する際も、既存のトリガーを再利用できるため、設定が非常に簡単になります。

リマーケティングタグの管理も効率化されます。Google広告、Facebook、Yahoo!など、各媒体のリマーケティング(リターゲティング)タグをGTMで管理することで、どのページに訪れたユーザーをどの広告でリターゲティングするか、柔軟に設定できます。

例えば、「商品詳細ページを見たが購入しなかったユーザー」に対してリマーケティング広告を配信する場合、GTMのトリガーで条件を細かく設定できます。

クロスドメイントラッキングは、複数のドメインにまたがるユーザー行動を追跡する機能です。例えば、メインサイト(example.com)とECサイト(shop.example.com)が別ドメインの場合、通常は別々のセッションとして計測されてしまいます。

GTMとGA4を使ったクロスドメイントラッキングでは、両方のドメインに同じGTMコンテナを設置し、GA4タグの設定で「リンカー」機能を有効にすることで、ドメインをまたいだユーザージャーニーを正確に計測できます。

WordPressサイトでの活用

プラグインとの併用により、WordPressサイトでのGTM活用がさらに便利になります。「GTM4WP」プラグインは、GTMとWordPressの連携を強化するプラグインで、以下の機能が利用できます。

  • 記事のカテゴリー、タグ、著者名などをデータレイヤーに自動送信
  • ログインユーザーの役割(管理者、編集者など)をデータレイヤーに送信
  • 検索キーワードをデータレイヤーに送信

これらのデータをGTMで活用することで、「特定カテゴリーの記事を読んだユーザーにリマーケティング広告を配信」といった高度な施策が可能になります。

テーマ編集不要のメリットは、WordPressサイトでGTMを使う大きな理由の1つです。通常、タグを追加する際はテーマのheader.phpやfooter.phpを編集する必要がありますが、これはテーマ更新時に消えてしまうリスクがあります。

GTMプラグインまたは子テーマにGTMコンテナタグを設置することで、テーマ本体を編集せずにタグ管理が可能になり、テーマ更新時にも設定が消えません。

更新時のタグ保護も重要です。WordPressのテーマやプラグインを更新する際、直接埋め込んだタグは消えてしまうリスクがありますが、GTMで管理していれば、タグは安全に保護されます。GTMコンテナタグさえ残っていれば、管理画面で設定したすべてのタグが継続して動作します。


よくある質問(FAQ)

GTMは本当に無料ですか?制限はありませんか?

はい、Googleタグマネージャーは完全無料で利用できます。個人サイトから大企業のサイトまで、サイト規模に関わらず無料です。

ただし、超大規模サイト(月間数億PV以上)や複雑なエンタープライズニーズがある場合は、「Googleタグマネージャー360」という有料版が用意されています。こちらは、より高度なサポート、SLA(サービスレベル保証)、複数環境対応などの機能が追加されますが、一般的なビジネスサイトでは無料版で十分です。

無料版の制限として、コンテナあたりのタグ数やワークスペース数に上限がありますが、これらは数百〜数千単位の非常に余裕のある設定で、通常の運用で制限に達することはほぼありません。

GTM導入で既存のタグはどうなりますか?

GTM導入時、既存のタグは以下の3つの選択肢があります。

選択肢1:GTMに移行して、HTMLから既存タグを削除(推奨) 最も一般的な方法です。GTMでタグを設定し、プレビューで動作確認後、HTMLから既存のタグコードを削除します。これにより、GTMで一元管理できる状態になります。

選択肢2:GTMと既存タグを並行稼働させる(移行期間のみ) 移行の安全性を高めるため、一時的にGTMと既存タグの両方を稼働させ、データを比較する方法です。ただし、二重計測が発生するため、長期間の並行稼働は避けるべきです。

選択肢3:一部だけGTMに移行する セキュリティ上の理由などで一部のタグはHTMLに残し、その他をGTMで管理する方法もあります。ただし、管理が複雑になるため、できる限り統一することを推奨します。

いずれの場合も、移行前に必ずバックアップを取得し、段階的に進めることが重要です。

GTMとGoogleアナリティクスの違いは何ですか?

GTMとGoogleアナリティクスは、まったく異なる役割を持つツールです。

**Googleタグマネージャー(GTM)**は、「タグ管理ツール」です。Googleアナリティクスを含む、さまざまなタグをサイトに配信・管理するためのツールです。GTM自体はデータを計測・分析する機能はありません。

**Googleアナリティクス(GA4)**は、「アクセス解析ツール」です。サイト訪問者数、ページビュー、ユーザーの行動などを計測・分析するツールです。

関係性としては、「GTMを使ってGoogleアナリティクスのタグを配信する」という形です。GTMがあればGoogleアナリティクスが不要になるわけではなく、両者は補完関係にあります。

例えるなら、GTMは「配達トラック」、Googleアナリティクスは「荷物(計測ツール)」のような関係です。配達トラックで荷物を運ぶように、GTMでGoogleアナリティクスのタグを配信します。

小規模サイトでもGTMは必要ですか?

小規模サイトの場合、GTMの必要性は以下の要因で判断します。

GTM導入を推奨するケース:

  • Googleアナリティクス以外にも、広告タグやヒートマップツールなど、複数のツールを使っている
  • 将来的にマーケティング施策を拡大する予定がある
  • タグの追加・変更を頻繁に行う予定がある
  • エンジニアに依頼せず、自分でタグ管理をしたい

GTMなしでも問題ないケース:

  • Googleアナリティクスのみで、他のタグは使わない
  • タグの変更頻度が年に1〜2回程度
  • サイト更新を外部業者に完全委託しており、自分で触る必要がない

ただし、GTMの学習自体は将来のスキルアップにつながりますし、後から導入するよりも最初から導入しておく方が移行コストが低いため、迷ったら導入することをお勧めします。無料で使えるため、試してみるコストはゼロです。

GTMの設定を間違えるとどうなりますか?

GTMの設定ミスで起こりうる問題と、その対策を説明します。

起こりうる問題:

  1. データの二重計測:同じタグが重複配信され、アナリティクスのデータが2倍になる
  2. タグの配信漏れ:トリガー設定ミスでタグが配信されず、データが取得できない
  3. 間違ったページでのタグ配信:意図しないページで広告タグが発火し、余計なコストが発生
  4. 個人情報の誤送信:変数設定ミスで、個人情報がアナリティクスに送信される

対策:

  1. プレビューモードを必ず使う:公開前にプレビューで動作確認することで、ほとんどのミスは防げます
  2. 段階的に公開する:すべてのタグを一度に設定せず、1つずつ確認しながら進める
  3. バージョン管理を活用する:問題が発生しても、すぐに前のバージョンに戻せます
  4. テスト環境で試す:可能であれば、本番環境の前にステージング環境でテストする

万が一問題が発生しても、GTMのバージョン管理機能で数分で復旧できるため、致命的な事態にはなりません。


まとめ:GTMで実現するマーケティングの効率化

Googleタグマネージャー(GTM)は、Webサイトのタグ管理を革新的に効率化する無料ツールです。本記事で解説した7つの主要メリットを振り返りましょう。

  1. 完全無料で、Googleツールとの高い互換性
  2. コード編集不要でタグを一括管理
  3. マーケティング施策のスピードアップ
  4. サイトパフォーマンスの向上
  5. バージョン管理と復元機能による安全性
  6. プレビュー・デバッグ機能で正確な運用
  7. チーム協働とアクセス制御による効率的な体制

一括管理がもたらす業務改善効果は、単なる時間短縮だけではありません。マーケティング担当者が主体的にデータ計測を設計・実行できるようになることで、PDCAサイクルが高速化し、ビジネスの成長速度が加速します。

エンジニアへの依存度が下がることで、開発チームは本来のプロダクト開発に集中でき、マーケティングチームは迅速に施策を試せる。この相乗効果が、組織全体の生産性を高めます。

導入を検討すべき企業の特徴として、以下に当てはまる場合は、今すぐGTM導入を検討する価値があります。

  • 複数のマーケティングツールを使用している
  • 広告やアナリティクスの設定変更を月に2回以上行う
  • エンジニアリソースが限られている
  • サイトのパフォーマンス改善に取り組んでいる
  • データドリブンなマーケティングを強化したい

次のステップとして、まずはGoogleタグマネージャーのアカウントを無料で作成し、本記事で解説した「GTMの具体的な導入手順」に沿って、最初のタグ(Googleアナリティクス4)を設定してみましょう。実際に触れてみることで、GTMの便利さを体感できます。

不明点があれば、Google公式のヘルプドキュメントやコミュニティフォーラムも充実しています。また、DataVistaでは、GTMに関するさらに詳しい実践的なガイドも公開していますので、ぜひご活用ください。

GTMを活用して、効率的で成果の出るWebマーケティングを実現しましょう。

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